【初級編】アクションの基礎 〜いつベットし、いつチェックすべきか〜

 正しいアクションをしよう!

前回はポーカーで勝つためのポイントを説明したよね。覚えてる?

うん。えーっと、自分のハンドが強いときに大きく稼いで、自分のハンドが弱いときには負けを小さくするんだよね。

そのとおり。それこそがポーカーの必勝法なんだ。
利益を最大化して、損失を最小化するようなアクションをここでは「正しいアクション」と言うことにするよ。
正しいアクションをすれば、強いハンドを持っているときに最大限のチップを絞り取ることができるし、弱いハンドを持っているときは被害額を最小限に留めることができるんだ。

ふーん。じゃあ、逆に「間違ったアクション」もあるの?

そうなんだ。間違ったアクションすると、強いハンドを持っているときに十分なチップを絞り取れなかったり、弱いハンドを持っているときに被害が大きくなってしまう。最悪だね。

うわー、せっかく強いハンドが来たのにもったいない。

本当だよね。じゃあ、一体何が正しいアクションなのか説明していくね。今回もクイズ形式でいこうか。

よーし!来い!

  • あなた(UTG):AA
  • 相手(BU):??
  • ボード:J85

AAは最強のハンドじゃん!たくさん稼げそうだね!

そうだね、たくさん相手から稼ぎたいと思って、UTGのチンアナゴちゃんは結構大きめのベットをしました。すると、相手はその大きなベットにコールしてきました。

ふーん。どんなハンドでコールしたんだろ。

  • ターン:J
  • ボード:J85J

うーん・・・何か嫌な感じ。

嫌な感じだよね。ところで、相手の持っているハンドを一つに絞れって言われると無理なんだけど、実は相手のハンドの候補はいくつかわかってるんだ。

そうなの?どうやって?

フロップのとき、チンアナゴちゃんの大きなベットに相手はコールしたよね。どんなハンドでコールしたんだろう?

うーん、普通は何も役がないのにコールしないと思うから、やっぱりペアとか?

僕だったら相手のハンドレンジ(持っている可能性のあるハンドすべて)をこう考えるかな。

相手のハンドレンジ

ボード:J85J

  • クワッズ(フォーカード)・・・・JJ
  • フルハウス・・・・・・・・・・・J8, 88, 55
  • トリップス(スリーカード)・・・AJ, KJ, QJ...
  • ツーペア・・・・・・・・・・・・TT, 99, A8, A5...
  • クラブのフラッシュドロー・・・・クラブが2枚
  • ストレートドロー・・・・・・・・T9, 76
    ※実際には、プリフロップのアクションや相手のプレイスタイルによって、JJ、TT、99、KJsなどがハンドレンジから除外されたり、逆にAハイやKハイが加わったりもします。今回は議論をわかりやすくするため、相手はペア以上かドローを持っているという前提で話を進めます。

 

上から強い順に並べてるよ。一番強いのはJJ、一番弱いのはストレートドローだね。「ドロー」っていうのは、あと1枚でストレートやフラッシュなどの強い役が完成する状態のことだよ。

どうしてドローが一番弱いの?だって、完成したらすごく強くなるんじゃない?

鋭い質問だね。実は、ドローが完成する確率は計算できるんだ。今回は詳しくは触れないけど、リバーでフラッシュになる確率は約20%、ストレートになる確率は17%なんだ。

なんだ、結構低いんだね。

そう。ドローは欲しいカードを引けなかったらハイカードになっちゃうから、結局ドローの勝率はせいぜい20%で、このハンドレンジの中ではやっぱり一番弱いんだね。

じゃあやっぱりAAは結構強いし、リバーでフラッシュとかストレートを作られるのも嫌だし・・・そうだ、大きなベットをしたらJを持ってるって思ってくれるかも・・・!

うんうん。ということは?

オールインします!

おおー!

どや!やっぱ大正解?

ううん、あらゆるアクションの中で一番やってはダメなものを選んだから、驚いただけだよ。

ええー!?何で!?

いろいろ言いたいことはあるんだけど、一つずついこうか。もしも相手がJJ88KJとかを持ってたとするよね。

うんうん。

そんな彼はチンアナゴちゃんのオールインにどうするかな?

え、そりゃコールするでしょ。だってクワッズとかフルハウスとかトリップスができてるんだよ?最強クラスだもん。

だよね。じゃあ、相手が99とかA8を持ってたらどうかな?

ええー・・・ペアがあるけど相手はJかもしれないし、AAとかKKとかのもっと強いペアかもしれないし・・・。
あ、でも、フラッシュとかストレートのドローで強気にオールインしてるのかも・・・。
うーん、でもやっぱりフォールドすることのほうが多いかな。

うんうん。僕もそう思うよ。
じゃあ最後に、相手がATとか76を持ってたら、相手はどうするかな?

フラッシュドローかストレートドローってことだよね。
うーん、リバーで完成したら強いけど・・・あ、でも勝率が20%しかないのか。じゃあフォールドするかな。

そうだね。じゃあ、今の話を表にしてみようか。

 

オールインに対して相手は?

JJ(クワッズ)・・・・・・・コール
88(フルハウス)・・・・・・コール
KJ(トリップス)・・・・・・コール
◎チンアナゴちゃんのAAはこの辺の強さ
99(ツーペア)・・・・・・・フォールド
A8(ツーペア)・・・・・・・フォールド
AT(フラッシュドロー)・・・フォールド
76(ストレートドロー)・・・フォールド

 

こんな感じだね。
チンアナゴちゃんのAAはツーペアの中では最強だけど、J持ち以上には負けてるんだね。
チンアナゴちゃん、ポーカーの必勝法は覚えてる?

うん、自分のハンドが強いときに大きく稼いで、自分のハンドが弱いときには負けを小さくするでしょ?

そうそう。じゃあ、そのことを頭に置きながらこの表を見て、何か思うことはないかな?

えー、だってそもそも私のAAが強いのかどうかわからないし。
あ、でも相手のハンド候補はわかってるから・・・あれ?オールインしても意味ないのでは・・・?

そのとおり。もうちょっと詳しく教えて?

オールインすると、私のAAよりも強いハンドにはコールされるから負けが大きくなって、AAより弱いハンドはコールしてくれないから稼げないってことでしょ?

そのとおり。本当は損失を最小化したいのに、むしろ損失を大きくしちゃってるんだね。
でも、実はそれだけじゃないんだ。このオールインは本当は稼げていたかもしれない利益も取り逃がしてるんだよ。

どういうこと?

実は相手は76を持っていたんだ。それで、リバーのカードは2でした。
ボードはこれでJ85J2だね。

ストレートドローだったけど引けなかったんだね。よーし。

じゃあリバーでチンアナゴちゃんはチェック、ベットのどちらをすべきでしょうか。

またクイズ?今度はリバーのアクションなんだよね。
うーん・・・あれ、これ前回のクイズと同じじゃない?ってことは、チェック?

そのとおり。ここでチンアナゴちゃんがベットすると、67の相手は当然フォールドしちゃうよね。
でも、チェックすればブラフでベットしてくれるかもしれない。それにコールすれば、その分だけ稼ぐことができるんだね。

うん。これはわかるよ。でも、それがさっきのオールインの話とどう関係してるの?

つまり、相手がストレートやフラッシュのドローを持っているなら、相手にブラフをさせたほうが利益が大きくなるんだ。
でも、ターンでチンアナゴちゃんがオールインしてしまうと・・・

そっか、相手はフォールドしちゃうから、オールインにコールしてくれないばかりか、ブラフしてくれてかもしれない利益を取り逃がしちゃうってこなとね。わかってきた!

そういうこと。だから、ターンの正しいアクションはチェックなんだ。
このクイズの答えをまとめると、こうなるよ。

 

ターンはチェックが正解!
  1. ポーカーの大原則は、利益を最大化し、損失を最小化すること。
  2. ターンでベット(特にオールイン)をすると、相手が自分よりも強いときはコールかレイズをされて損失が大きくなり相手が自分よりも弱いときはフォールドされてそれ以上利益を得ることができない
  3. ということは、これは利益を失って損失を大きくするベットなので、ポーカーの大原則に反している。
  4. なので、ベットではなくチェックするのが正しいアクションになる

 

そっか、ターンでベットすると意味ないんだね。
でもジョーズくん、私がチェックしたとき、相手がベットしてきたらどうすればいいの?

コールすることが多いだろうね。
相手がドローでブラフをしてきてるなら、相手のベットにコールすれば利益が出るからね。
それに、このボードはドローハンドが比較的多いボードなんだ。

そうなの?どうして?

クラブが2枚落ちてるからフラッシュのドローあるし、T9、76、QT、Q9とかいろいろなハンドがストレートドローになってるからね。

そっか、相手がフルハウスとかJのトリップスを持っているよりも、何かのドローを持っていることのほうが多そうってことか。

うん。厳密には相手のプレイスタイル、ベットの額なんかも参考にしてコールするかどうかを決めるけどね。

なるほどー。でもジョーズくん、今回はターンでチェックしたほうが良いってわかったけど、別のハンドとかボードが来たとき、ちゃんと正しいアクションができるか不安だよ。

OK。じゃあ次の章ではアクションを間違えないためのポイントを説明するよ。

 

正しいアクションはバリュー、ブラフ、チェック

さて、さっきは具体的なボードとハンドを使って説明したけど、ここではもうちょっと一般的な話をするよ。
そもそもどういうときにベットやチェックをすれば、それが正しいアクション、つまり利益を最大化して、損失を最小化するようなアクションになるのかな。チンアナゴちゃんはそれが知りたいんだよね?

そうそう!それさえ知ってれば、どんな場面でも迷わなくて済むかなって。

OK、じゃあ一つずついこうか。まずはベットだね。
正しいアクションになるベットは2種類あるんだ。「自分よりも弱いハンドにコールさせるベット」(バリューベット)と、「自分よりも強いハンドをフォールドさせるベット」(ブラフベット)の二つだね。

バリューベットとブラフベットね。例えば?

例えば、これは典型的なバリューベットの場面だね。

  • あなた(MP2):88
  • 相手(BU):??
  • ボード:K85

チンアナゴちゃんは8のセット(スリーカード)ができているね。現状でこれよりも強いハンドはKKのセットだけ。
ここでチンアナゴちゃんがベットすると、相手はKのペア、8のペア、フラッシュドロー(ダイヤ)、ストレートドロー(67)など、たくさんのハンドでコールかレイズをするから、「自分よりも弱い相手にコールさせるベット」、つまりバリューベットが成立するよ。

ふんふん。ブラフベットにはならないの?

このボードで88がブラフをすることは無理だね。
ブラフベットは「自分よりも強い相手をフォールドさせるベット」だから、88でKKをフォールドさせる見込みがないと打てないんだ。
もちろん、最強のKKはフォールドするわけがないよね。だからここではバリューベットだけが成立して、ブラフベットは成立しないんだ。

そっか、じゃあ逆にブラフベットを打つべき場面ってあるの?

もちろんあるよ。さっきのボードでチンアナゴちゃんが88じゃなくて76を持ってるときなんかはそうだね。

あ、ストレートになりそう。

うん。チンアナゴちゃんはストレートドローができてるね。
でも、現状はただの7のハイカードなんだ。
ここでベットをすると、チンアナゴちゃんよりも強くてしかもフォールドしてくれるハンドがいろいろあるよね。

えーっと、7のハイカードよりも強くてフォールドしてくれそうなのは、例えばもっと強いハイカードでドローもできてないJTとか、QJとか、A4とか?

そのとおり。あと、忘れちゃいけないのが22、33、44とかの弱いポケットペアだね。
相手によっては66や77、5のペアもフォールドしてくれるかもしれない。ボードに落ちてるKのペアが怖いからね。
そうしたらブラフベットが成立しそうだね。

でも逆にバリューベットにはならないんだよね?

そう。チンアナゴちゃんの7ハイよりも弱いハンドで、ベットにコールしてくるようなハンドってほとんどないよね。だからバリューベットは成立しないんだ。

うーん・・・。

いまいち納得いかないかな?

今の説明だと、とにかくベットしてれば勝手にバリューベットかブラフベットになるんじゃないの?

じゃあ、さっきのAAを持ってたボードに戻ってみようか。

  • あなた(UTG):AA
  • 相手(BU):??
  • ボード:J85J

ここでさっきチンアナゴちゃんは大きなベット(オールイン)をしたけど、それはバリューベットとブラフベット、どちらかな?

えっと、自分よりも弱いハンドにコールしてほしいのがバリューベット、自分より強いハンドにフォールドしてほしいのがブラフベットだから・・・あれ?どっちでもないじゃん!

そうなんだよ。自分より弱いハンド(ツーペア、ドロー)はコールしてくれないからバリューベットはダメ、自分よりも強いハンド(クワッズ、フルハウス、トリップス)をフォールドさせることはできないからブラフベットはダメだよね。

マジか・・・。

正しいアクションになるベットはバリューかブラフなんだから、そのどちらも成立しないなら、それは間違ったアクションってことになるんだ。

じゃあ、バリューにもブラフにもならないときにチェックするってこと?

まさにそういうことだよ。
バリューにもブラフにもならない、でも自分のハンド(AA)はショーダウンしたときにそこそこ勝てる見込みがあるからフォールドはしたくない、そういう曖昧なときにチェックするんだ。

なるほど!完全に理解したよ。じゃあ、レイズはいつするの?

レイズもベットと同じだよ。バリューレイズとブラフレイズの二つがあって、どちらかが成立してれば正しいアクションになるんだ。

自分より弱いハンドにコールしてほしいのがバリューレイズで、自分より強いハンドをフォールドさせたいのがブラフレイズってことね。

そういうこと!正しいアクションはバリュー、ブラフ、チェックのどれかってことがわかったかな。

Yes, Sir!

今日はここまでにしようか。次回はいよいよどんなハンドで参加すべきか、レンジについて説明するよ。

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