海外カジノ遠征記 ~マニラ4, 5日目・コンビニ事情~
マニラのコンビニ事情
日本ほどじゃないけどマニラにもコンビニはチラホラあるんだ。World Resort Manilaの周辺にはセブンイレブンとローソンがあるよ。
品ぞろえはどうなの?
食料品は水、ジュースなんかの飲み物、お菓子、菓子パン、缶詰なんかが充実してたね。日本みたいにオニギリや弁当、サラダなんかはないけどね。
セブンイレブンには肉まんやドーナツ、ホットドックがあったよ。
ローソンにはホットスナックがあったね。チキンにはライスが付いてくるのかな。ランチボックスにライスと一緒に入れて提供されてたよ。
生活雑貨はひげそりや石鹸、生理用品なんかがちょこっとあったよ。でも、日本ほど充実はしてなかったかな。そういう雑貨はスーパーマーケットで買うか、日本から持って来るほうが無難だろうね。
改めて日本のコンビニの充実っぷりに感動するね。
そうそう、World Resort Manilaの前のセブンイレブンには牛丼やカレーライスなんかの調理済食品があったよ。
電子レンジで温めるタイプ。完成品はこんな感じ。
お米は現地のインディカ米なの?
日本米と現地米が半々ぐらいだったかな。そこまでパサパサ感は気にならなかったよ。ルーは日本のインスタントカレーにそっくりでおいしかったよ。
牛丼はこんな感じ。これも米は現地米と日本米が半々で、味もそこそこイケたよ。醤油とみりんがフィリピンで味わえるのが何よりうれしかったな。
気になるお値段は?
どちらも85ペソ(約170円)だったよ。
安いッ!
現地価格では割と高いほうだけど、物価が違うからね。味も悪くないし、コンビニ飯ではこの二つがコスパ最強だと思うよ。
そうそう、それとマニラのコンビニではほぼどこでもSIMカードとプリペイドカードが置いてあるよ。
ネット関係は海外に行ったらまず最初にやるべきことだもんね。
フィリピンのSIMはSmartとGlobeの2社が主流みたいだね。どこのコンビニでもどちらかは置いてるみたいだね。SIMカード本体は40ペソ、プリペイドカードは自分のプランに合わせた価格のやつを買えばいいと思うよ。
マニラのカジノ飯(2)
さて、今日もWorld Resort Manilaの飲食店をレビューしていこうかな。今回は2階のHAWAIIAN SHRIMP HOUSEに来たよ。
HAWAIIAN SHRIMP HOUSE ★★★★★
SHRIMPってことはエビ料理のお店なのかな。
そうみたいだね。でもね、ここにはもう一つの名物があるんんだ。それがこれ、サーモンマンゴー丼だよ。
サーモンとマンゴーって合うの!?
うん、これがウマいんだ。ライスの上に角切りのサーモンとマンゴー、スライスした玉ねぎ、キュウリ、青ネギ、パプリカ、香草が散らしてあって、味付けは多分ナンプラーとレモン果汁かな?
味の想像がつかないなあ。どんな感じなの?
ナンプラーの塩加減とレモンの酸味、マンゴーの甘みが渾然一体となって、日本では絶対にない味だね。一見めちゃくちゃな組み合わせに見えるけど、ちゃんと味としてまとまってるんだ。玉ねぎやキュウリの食感も◎。魚臭さもあんまり感じないよ。
すっかり食レポが板についてきたね。
それにね、この店では現地米と日本米を選べるんだ。Japanese riceって伝えれば日本米100%の丼を持ってきてくれるよ。
ほほう、それはポイント高いね。お値段は?
サーモンマンゴー丼は250ペソ(約500円)。量は牛丼チェーンの並盛りよりもちょっと少なめかな。小腹が空いたときにちょうどいいよ。
ちなみに同行者のフィッシュかもはこれが好きすぎて2倍サイズ(500ペソ)のを注文してたよ。
ああ、ご飯の話ばっかりでお腹空いてきちゃった。この時間に飯テロは良くないよ。
これを書いてる僕が一番ダメージを食らってるよ。カジノになんか食べに行こうかな。次回のカジノ飯もお楽しみに!
今日の戦績
今日は夕方までバタバタしててね、20時から遅めの出勤になったよ。今日のレートも前回と同じく100/200(2/4$)。
今日はちょい勝ちだね。っていうか、1時間ぐらいしかプレイしてないんだ。
うん。今日はテーブルが悪すぎたから早々に切り上げたよ。
悪いってどんなふうに?
ルースアグレッシブやコーリングステーションが少なかったよ。社長が2人いたけど、ほかの6人はプロかタイトなプレイヤーばかり。全然おいしくないテーブルだったよ。それに、肝心の超アグレフィッシュの社長に対して僕はOOPで、アジャストしにくかったっていうのもあるね。
でも、タイトなプレイヤーに対してもアジャストできるんでしょ?
うん。また別の記事でもまとめるけど、適切な状況でマルチバレルやフロートを駆使すればアジャストできることが多いよ。
マルチバレルって、ダブルバレルとかトリプルバレルのこと?
そうそう。基本的に彼らはベストハンドを持たずにショーダウンに向かうことを嫌うから、ポラライズされたレンジ(すごく強いorドローハンド)でダブルバレルやトリプルバレルを打つのが+EVになりやすいね。でも、降りるべきトップペアを降りられないような下手なタイトプレイヤーも多いから、そこは見極めは大事だけどね。
フロートは特にターン以降のベット率が低いプレイヤーに対して有効だよ。プリフロップのレンジはタイトで、フロップでは何でもかんでもCBを打つんだけど、コールされたら諦めてチェック、というプレイヤーには特に有効だね。
ツーオーバー、GSSD、バックドアフラッシュなんかでIPからフロートすれば、そういうプレイヤーに対してターン以降でプレッシャーをかけられるよ。
なるほど。タイトにやってりゃ勝てるってわけでもないんだね。でも、やっぱやるならコーリングステーションの社長とプレイしたいよね。
時給は圧倒的に社長テーブルのほうが出るよね。
それに、タイトプレイヤーにアジャストするためにはたくさんの情報が必要なんだ。一言でタイトといってもいろいろなタイプがいるから、それぞれ個別にアジャストプランが必要だからね。
ふむふむ。なんか具体例はないの?
今日は特にハンドレビューすべきものはないかな。幸運にもAAでそこそこのポットが取れたから、さっさと利確して抜けたよ。別のテーブルが空くのを待っても良かったよけど、もう今日は帰ろうかなって。
平日より週末のほうがおいしいみたいだね。
うん、週末のほうがプレイヤーもテーブル数もベターだと思うよ。
さて、今日はこのぐらいかな。次回もよろしくね!
収支(~5日目) +$1218.00
海外カジノ遠征記 ~マニラ3日目・カジノ飯~
マニラのカジノ飯(1)
今回の主戦場のWorld Resort Manilaは1階がカジノになってて、2〜5階には飲食店やブティックが入ってるんだ。
オシャレな雰囲気だね。ここにいるだけでリッチになった気がするよ。
今日から日替わりでWorld Resort Manilaの飲食店をレビューしていくね。
Pepper Lunch ★★★☆☆
4階にあるPepper Lunchは日本米が食べられる貴重なスポットだよ。薄切りの牛肉と白ごはんをアツアツの鉄板の上で混ぜ合わせながら食べるんだ。
写真は大盛り(ジャンボサイズ)で値段は300ペソ(約600円)。
どんな味なの?
塩コショウが効いた牛肉焼き飯って感じかな。そのままだけどね。ジャンクフード的な味だよ。
でも、日本米が食べられるのはイイね。
そうなんだよ。パサパサしたインディカ米が苦手な人にはオススメだね。
お好みでバーベキューソースをかけてもいいみたいだけど、ソースなしでも味付けはしっかりしてたから、僕はそのまま食べたよ。
サイドメニューとかはあるの?
サイドメニューはサラダとミソ汁があるよ。海外で飲むミソ汁はホッとする味だよね。
あ、あとトッピングにチーズとかもあったかな。お好みで大盛りもできるし、お腹が空いてるときはオススメだね。
今日の戦績
お目当ての100/200(2$/4$)は満席だったからリザーブして、ひとまず50/100(1$/2$)をプレイしてみたよ。
途中で食事休憩を挟んだから50/100は2セッション。そして深夜からようやく100/200の席に着けたよ。
快勝だね!
うん。富豪と社長だらけの良いテーブルだったよ。同卓したフィッシュかも以外はコーリングステーションとオーバーアグレッシブなプレイヤーばっかり。
今日はビッグポットのハンドレビューを二つしようかな。
2/4 9max
MP2 JcJd
UTG straddle8, MP1 c MP2 r36, BU UTG MP1 c
JhTcTd9d4d
b80 f c c
x b130 f c
x all-in590 f
まずは勝ったハンドから話そうかな。ストラドルが8ドル入ってMP1がコール、MP2の僕は当然アイソレートのために大きくレイズしたよ。
3人もコールするなんて怖いなあ。
うん。ポケットペアでマルチウェイなんて戦いたくないけど、コーリングステーションだらけのテーブルだからしょうがないね。でも、MP2はIPを取られやすいから、もっとレイズ額を大きくしてもよかったかも。
そんな不安も何のその、フロップでフルハウスができましたと。
うん。ひとまずホッとしたよ。あとはどうやってポットを最大にしようか考えたんだけど、いきなりUTGからドンクベットがきたんだ。今回はレイズせずに単にコールするスロープレイを選択したよ。
ここでレイズするとバリューターゲットはJ、T、ストレートドローだけど、Jは残り1枚しかないし、Tのトリップスはわざわざレイズしなくてもターンでオールインまで入れてくれそうなプレイヤーばかりなんだ。だから単にコールしてターンを見たほうがポットが大きくなりそうだと考えたよ。
ターンの9はうれしいカードだね。KQはストレートが完成したし、T9と99は僕よりも弱いフルハウスが完成してるよ。この辺のハンドは僕のベットに対してレイズを返してくれそうだね。ダイヤのフラッシュドロー、Qや8のオープンエンドもコールをもらえそうだよ。
このターンのベットは小さめだね。どうしてなの?
例えばポットサイズのような大きなベットだと、Tのトリップス、フルハウス、ストレートしかコールがもらえなさそうだったんだ。いくらコーリングステーションといえどもね。
それならJのペア、フラッシュやストレートのドローから少しでもバリューを取ったほうが良さそうだと判断して1/3のサイズにしたよ。Tのトリップスなんかを相手が持ってる場合はレイズを返してくれるかもしれないし、少なくともリバーでオールインまで持っていけそうだからね。
なるほど、そういう目論見があったんだね。
あともう一つはスタックサイズとポットの比率(SPR)の問題だね。僕はリバーでUTGとBUをコミットさせてしまいたかったんだ。
うん?どういうこと?
例えばUTGがKJを持っていたとするよね。ターンでの僕の1/3Potのベットにコーリングステーションの彼はコールするでしょうと。そうすると、リバーでUTGのスタックサイズとポットがほぼ1対1になるんだ。もしリバーで2のようなドローを完成させないカードが落ちたとして、そこで僕がUTGに対してオールイン要求をすると、彼はJのトップペアでコミットしてしまうんだね。
えっと、つまり、KJを持ってるUTGから見ると、リバーでジョーズくんのベットに対してコールするしかないってこと?
100%コールするわけじゃないと思うけど、オッズは悪くないんじゃないかな。ポットベットにコールするなら3回に1回勝てばいいんだから、僕のベットが3回に1回はブラフだったらいいんだよね。
なるほど、ターンはドローが多いボードだもんね。ブラフも十分ありそうだ。
フロップ・ターンでのベットサイズを調節して、リバーで相手に良いオッズを与えることをコミットプランっていうんだ。今回はフォールドされちゃったけどね。
さて、もう一つハンドレビューをしてみようか。今回の遠征で初のバッドビートだよ。
2/4 9max
HJ JdJh
UTG straddle8, HJ r30 c c f f c
Js6d4cTdAd
x x x x
x b60 r140 f f r320 c
x all-in540 c, CO shows Kd2d
またJJでセット!?
ターンまでは最高の気分だったんだけどね。明日はちょっといいもの食べようかな、何がいいかな、とか考えてたよ。でも、結局この1ハンドで900ドルぐらい失っちゃった。
マジか・・・。怖いなあ。
まあまあ、勝ってるときで良かったよ。テーブルに座った途端にコレを食らったらプレイに影響が出るかもしれないしね。
さて、プリフロップは当然オープンするとして、フロップはかなりドライだよね。マルチウェイとはいえバリューターゲットがあまりいないから、今回もスロープレイを選択したよ。
ターンのTはセットの僕にとってうれしいカードだよ。フラッシュやストレートのドローができたからね。当然バリューベットを打つことになるんだけど、COから小さめのレイズが返ってきたよ。しかも残り2人はフォールドしてヘッズアップが確定しましたと。
最高じゃん!
うん、あとはいかにCOから最大限バリューを引き出すかだけを考えてたよ。コミットプランも含めてね。ただし、さっきのJJフルハウスと違って、今回僕はOOPに座ってるんだ。
だからここでCOのレイズに対してコールすると、基本的にリバーはチェックすることになるよね。それならターンでバリューの3ベットを打って、リバーでオールインしたほうがコミットプラン的にも良いと判断したんだ。でもね・・・。
リバーでダイヤが落ちちゃったと。
うん。しかもKQのストレートを完成させるAなんだね。ため息が出そうになったよ。COは当然のようにオールインしてきたんだけど、微妙な判断だけど多分コールして問題ないと思うよ。結果は負けだけどね。
フラッシュやストレートは怖くないの?
もちろん怖いけど、このリバーのコールにはいくつか理由があるんだ。
- コールに必要な勝率は約30%
→Jのセットより強いハンドのコンボ数をN、弱いハンドのコンボ数をMとすると、M/(N+M)=3/10なのでM=3/7*N
→フラッシュやストレートのコンボ数の半分程度ブラフしてきているのなら、リバーのコールは正当化される - 相手はマージナルなハンドでもブラフに変えてベットしてくることがある
- Jをブロックしているため、相手のフラッシュのコンボが少なくなっている
ああ、それはコールしたくなっちゃうなあ・・・。
うん。相手がGTO使いならともかく、レンジもアクションもバランスが全く取れていないプレイヤーだからね。このリバーはコールでアジャストできると思うよ。結果は残念だったけどね。
さて、バッドビートは食らったけど、今日はテーブルに恵まれて快勝だったよ。収支はこれで1000ドル超!次回もよろしくね。
収支(~3日目) +$1170.00
海外カジノ遠征記 ~マニラ2日目・スーパーへ買い出し~
街へ買い出しに
今日はカジノから少し離れた市街地に買い出しに行ったよ。world resort manilaの正面から無料のシャトルバスが出てるんだ。市街地は歩いても行ける距離だけどね。
バスに揺られて約10分、ビラモア(Villamor)に着いたよ。
おお、現地感あるねえ。
まずは服飾店でシャツと肌着を何着か買ったよ。思ったより蒸し暑くて、肌着をかなり消費しちゃったからね。
ほかにも果物のジュースやホットドッグの露店、クリーニング屋、駄菓子屋?みたいな雑貨店などなど、色んな店で賑わってたよ。
ノラ犬がゴミをあさってる。怖いなあ。
噛みつかれたら病気をもらいそうだよね。遠回りして避けて歩いたよ。
市街地からホテル街に戻って、24時間営業のスーパーマーケットに向かったよ。METROっていう名前のスーパーだね。正面玄関の写真は撮り忘れちゃったけど、日用品から食品、家電まである大きなスーパーマーケットだったよ。
こんな感じで日本の食品もあったよ。ただし値段は日本の倍くらいだけどね。
韓国の辛ラーメンが大量にあったよ。現地で人気なのかな。僕も好物だからつい買っちゃった。
お米がキロ売りしてるね。
1キロ当たり約150円。安いけど、インディカ米は日本米に比べてかなりパサパサしてるんだよね。スープなんかに浸して食べたりしないとおいしくないんだよね。慣れの問題なのかな。
さて、じゃあ今日も今日とてカジノに行こうかな。土曜日だから人も多そうだね。
今日の戦績
今日は100/200(2$/4$)を打ちにきたよ。100/200は満席だったからとりあえずリザーブして、席が空くまで50/100をプレイ。
ちょい勝ちだね。
うん。しばらくして100/200が空いたから移動したよ。4時間ほど打ったけど、いいとこなかったなあ。特に難しい判断もなく、普通に負け続けたよ。
今日はトータルで負け。ま、こんな日もあるね。せっかくだからハンドレビューをしようか。
1/2 9max
CO QhJh
CO r6, f c f
8h4c3cQdKh
x b10, c
x b22, c
x b25, c, SB macked
50/100でのハンドだよ。テーブルはBB以外はみんなコーリングステーション。COからQJsでオープンするのは標準的なプレイだと思うよ。
フロップは843か。ここでCBを打ったのは?
SBはワンペアは絶対フォールドしないだろうけど、KハイやQハイはフォールドさせられるかなと思ったよ。
ふむふむ。ブラフベットなんだね。
あと、8があるから、ターンでハートやT、9が落ちれば僕のQJsにドローがつくし、Kもブラフアウツとして数えて良さそうだね。そういうカードがターンで落ちればまたブラフが打てそうだよ。もちろん今回みたいにQやJが落ちてもバリューベットが打てるね。つまり、ターンでダブルバレルが割と打てそうだと踏んでのCBだったよ。
ちなみにターンでAが落ちたらどうしてたの?
Aはどちらかと言うとSBに有利なカードだから、ターンはチェックすると思うよ。
そうなの?AはオープンしたCOのほうが持ってそうだけど・・・。
それは大事なポイントだね。順を追って説明するね。
まず、仮に僕がAKを持っていたとして、このフロップでCBは打たないよ。843ttのローボード(小さい数字が並んだボード)はプリフロップでコールレンジを持っているSBに有利なボードで、僕のAKはマージナルな強さなんだ。
マージナルなハンドでCBを打つとどうなるの?
そこでCBを打つと、SBに色んなハンドでチェックレイズされて、アジャストされちゃうんだね。
ふむ、ローカードはSBのほうがたくさん持ってるから、SBのほうが絡んでそうなフロップなんだね。ツーペアやセットはもちろん、フラッシュやストレートのドローでもチェックレイズされちゃうってことか。
そうそう。だからマージナルな価値があるAハイでベットすると、チェックレイズで簡単に対応されちゃうんだ。それならフロップはCBを打たずにチェックで回したほうがいいんだね。逆にこのフロップで僕がブラフCBを打つハンドは、例えばショーダウンバリューがあまりないQハイやJハイ、フラッシュやストレートのドローってことになるかもね。
さて、それでSBはCBにコールしたんだけど、彼はAを持っていてもおかしくないね。
なるほど、クラブのフラッシュドローね。それでターンのAでペアにもなったと。
うん。それにSBはコーリングステーションだから、Aキッカーのワンペア、A-5のGSSD、単なるAハイでもフロップCBにコールしてる可能性もあるよ。だからターンのAはフロップでCBを打った僕のレンジには少なくて、SBのレンジには多いんだね。
なるほど〜。でも、実際にはターンでQが落ちましたと。
うん。トップペアを手に入れたよ。ワンペア、ドローに対してバリューベットを打ちましたと。
チェックレイズされたらどうしてた?
フォールドかな。コーリングステーションのレイズにブラフなしってね。
ターンのベットにもコールされてと。リバーは?
シンバリューベットを打つことにしたよ。バリューターゲットは9以下のワンペア、もしかしたらTTだね。SBがKを持っているとしたらK8のツーペアやKが考えられるけど、あまりコンボ数としては多くないからね。ここでも大きなチェックレイズがきたらフォールドするよ。
で、無事ポットが取れましたと。相手は何持ってたの?
マックしたからはっきりとはわかんないけど、JJ no goodと言ってたんだよね。
JJ??そんなハンドを持ってるってことがあり得るの???
もしかしたらジャネット・ジャクソンのことだったのかな・・・。
JJでプリフロップに3ベットを打たず、フロップ・ターン・リバーで3回コールするのかあ。恐るべし、コーリングステーション!
そう言ってるだけで、ホントはフラッシュドローとかかもしれないけどね。
さて、明日は100/200で勝ちたいな。次回もよろしくね!
収支(~2日目) +$113.00
海外カジノ遠征記 ~マニラ1日目・渡航からゲーム開始まで~
フィリピン・マニラのカジノへ
11月9日からマニラに来ています。今日の最高気温はなんと32℃だって。
蒸し暑いねえ。
今回の主戦場はここ、World Resort Manila。ポーカールームは1階のカジノにあるよ。
レートは25/50、50/100、100/200、200/500があるよ。単位はペソ(1ペソ=約2円)だね。
カジノのエントランスはこんな感じ。
おお~。ゴージャス・・・。
さて、じゃあ初回だし、まずは今回の遠征を出発から振り返ってみようかな。
移動・宿泊
今回は関空から出発したよ。エアバスを1カ月前から予約しておいたから、往復で2万5000円ぐらいだったかな。
ニノイアキナ空港に到着。World Resort Manilaにはタクシーで移動するよ。
uberは東南アジアから撤退しちゃったけど、フィリピンでは代わりにgrabという配車サービスアプリが使えるんだ。
ただし、grabを使うためにはネット環境(Wi-Fiか海外SIM)が必要なんだ。今回は空港に着いたばかりでネットが手に入らなかったから、しょうがなく現地のタクシーを利用したよ。
ぼったくられなかった?
あらかじめ行き先と値段を交渉しておくとだいぶマシみたいだね。今回は空港からWorld Resort Manilaまで245ペソで行ってくれたよ。
ここが今回泊まった部屋だよ。同行者のフィッシュかもがAirbnbで予約してくれたんだ。日割りすると一泊なんと約1600円。
安ッ!
1カ月とかの長期契約をするとお得なことが多いみたいだね。部屋からカジノのあるWorld Resort Manilaまでは徒歩2分。最高の立地だよ。
World Resort Manilaの近くにはコンビニやマクドもあるよ。あと、少し歩いたところに24時間営業のスーパーマーケットもね。
ほほう、徒歩圏内で生活周りが全部そろうのはイイね。
食事はスーパーで買ってきたものを調理するか、カジノ内の飲食店で済ますかだね。
どうしても野菜不足になりがちだから、ビタミンやミネラルのサプリメントは必須だよ。
World Resort Manilaの飲食店はどんなのがあるの?
飲食店のフードコートにはいろいろ入ってるみたいだね。また今度食レポしてみようかな。今回食べたのは1階のカジノのすぐそばにあるCafe Maximsのクラムチャウダースープだよ。
あ、おいしそう。
うん、これはすごくおいしかったからおすすめだよ。値段は330ペソ。日本円で700円弱かな。
さて、腹ごしらえも済んだし、いよいよカジノに向かおうか。
カジノ到着からポーカーテーブル着席まで
World Resort Manilaに着いたら、まずはカジノのメンバーズカードを作ろう。パスポートが必要だから気をつけてね。
あとはメンバーズカードと現金を持ってpoker registrationに行けば席のリザーブができるよ。
現金ってフィリピンの通貨のペソだけ?
隣に両替のコーナーがあるから、円をそこでペソに替えればOKだよ。ただし、円-ペソの交換レートはカジノや両替所によってまちまちだから気をつけてね。
みんなタバコ吸いながらスロットとかルーレットとかやってるね。カジノは禁煙じゃないんだ。
うん、World Resort Manilaはポーカールーム以外は喫煙可だよ。でも、ルームといっても壁で仕切られてるわけじゃないから、煙が結構入ってきちゃうんだ。タバコの煙が苦手な人はマスクとか持参するといいかもね。
のどが渇いたときはドリンクとか注文できるの?
もちろんできるよ。水やオレンジジュース、コーラなんかは無料だよ。その辺を巡回してる「サービス」っていうウェイターさんに声をかければ持ってきてもらえるんだ。
Water, please!
Yes, certainly sir.
フィリピンの公用語はタガログ語と英語だよ。カジノの従業員はみんな英語がしゃべれるから、なにか頼むときは全部英語でOKだよ。
それと、今回は海外カジノで使えるワンフレーズ英会話もまとめてみたよ。あくまで個人的にこれは役に立ったな~ってフレーズをまとめてるだけだから、独断と偏見に基づいたものだけどね。また随時追加していく予定だよ。
今日の戦績
初日は移動でクタクタだったから、50/100のテーブルでまったりプレイしたよ。米ドル換算だと1$/2$の低レートだね。
どうだった?勝ったの?
うん。ツイてたのもあって快勝だったよ。これが初日の戦績。
おおー、時給1万円はおいしいね。ハンドレビューしてよ。
OK。じゃあビッグポットから話そうかな。下のリンクをクリックするとリプレイ動画が始まるよ。
1/2, 9max
BB Th9c
MP1, HJ, CO, BU, SB Limp, BB x
Jd8c6cQh4h
x x b8 c f c f c
x b30 f f r90, c
b140 c
幸運ここに極まれりだね。
うん。まあ、これは大体誰がやってもこうなるんじゃないかな。リバーのベットサイズは相手に対するオールイン要求だよ。
もう一つ見てみようか。これは判断が難しかったハンドだよ。
1/2, 9max
BU QcQd
UTG+1 HJ Limp, BU r12, SB UTG+1 HJ c
8c6c4hJhJd
x x x b30, f c c
x x x
all-in120 f f
うーん、リバーで降りちゃうの?っていうかターンでベット打たないんだ。
プリフロップから順番に見ていくと、まずリンプに対してBUのQQは当然アイソレートするよね。
フロップはかなりウェットなボードで、リンプコールした相手のレンジにはセットやストレート、ツーペアが入っていることはわかってるけど、この相手は典型的なコーリングステーションで、ツーペア+のハンドはドンクベットかチェックレイズをすることがわかってるから、ここはb/f(ベットフォールド)のプレイラインでCBを選択したよ。相手はとんでもなく広いレンジを持ってるから、ワンペアやドローにコールしてもらいたかったんだ。
ふむふむ。ターンはベットしないの?
ターンはJや8のペア、フラッシュドロー、ワンペア+GSSDなんかのハンドに対してベットしてもいいんだけど、UTG2のプレイヤーの残りスタックがちょうどポットサイズぐらいだったんだ。だからターンで例えば僕が1/4ポットをベットして、UTG2がそれに対してレイズオールインしたとき、僕はワンペア(QQ)でコミットしてしまうんだね。
コミット・・・オッズがいいからコールせざるを得ないってこと?
うん。その場合の必要勝率は1/4だから、相手がセットやストレートなんかの強いハンドをnコンボ持っているとすると、n/3コンボのオールインブラフレンジがあれば僕のコールは正当化されるはずなんだね。でも、正直そこまで相手が読めなかったし、自信がなかったんだ。それに、チェックしてリバーでラグ(ハンドの進展に無関係なカード)が落ちれば、リバーで相手がブラフしてくるレンジも増えるはずだと思ったんだね。
ふーん、それでチェックしたと。
リバーのJはすべてのドローを完成させないカードだからほっとしたんだけどね。しかもフロップのツーペアに対して勝てるようになったよ。
でも、相手は大きなベットをしてきたと。
そうなんだよ。しかもUTG2のこのベット、オールインなんだよね。HJはフォールドして、今回僕は長考してフォールドしたんだけど、コールが正解だったかもしれないね。
どんなハンドに負けてると思ったの?
大本命はJやJ8、J6、J4だよね。でも、Jを含むハンドにそこまでコンボ数がないし・・・相手は広いレンジを持ってるだけに難しかったなあ。相手のバリューレンジのコンボ数を数えるとこうなったよ。
- フラッシュドローからのJトリップス:AJs, KJs, JTs, J9s, J7s, J5s, J4s, J3s, J2s=9コンボ
- フロップワンペアからのJハイフルハウス:J8o, (J6o), (J4o)=12コンボ
- フルハウスorクワッズ:((JJ)), ((88)), ((66)), ((44))=3.3コンボ
- ストレート:((75))= 5.3コンボ
合計29.6コンボ
J6oやJ4oはいくらルースなコーリングステーションといえども、プリフロップでフォールドすることもあるはずだから、カッコをつけてコンボ数を半分にしてるよ。
あと、JJや88、75なんかはフロップでドンクベットかチェックレイズが飛んでくることが多いはずだから、二重カッコをつけてコンボ数を1/3にしてるよ。
ふむふむ。相手がブラフをするレンジは?
この手のプレイヤーは本当に何でもあると思うよ。引けなかったフラッシュドローはもちろん、8や6のペア、99やTTもリバーでオールインするかもしれない。
え、8のペアってブラフするの?
うん、ショーダウンバリューがあるから本来ならチェックするはずだよね。でも、相手は自分のハンドの強さを正しく測ることができないプレイヤーだから、「ターンでみんなチェック?ってことは8のペアの自分がベストハンドなのでは?」と勘違いしてのリバーオールインも十分あると思うよ。
Oh...そんなんされると困っちゃうね。
僕はこういうのを「無意識のブラフ」って呼んでるよ。
それでね、僕がコールするための必要勝率は約1/3で、相手のバリューレンジは約30コンボだから、15コンボのブラフレンジがあればいいんだよね。
相手は8とか6のペアでブラフしてくるんなら、15コンボ以上あるんじゃない?
ありそうだけど、8のペアで常にオールインをするわけじゃないだろうし、それにUTG2から見てHJと僕の二人が控えてるからね。ヘッズアップならともかく、さらにオールインする確率は下がると思うんだよ。
あー・・・それは確かに判断が難しいね。
ここでビッグポットを争わなくても、もっと楽に取れるポットが先であるだろうし・・・そう思ってフォールドしちゃったよ。判断に自信がなかったんだ。でも、ブラフするレンジは結構たくさんあると見てコールするべきだったかもしれないね。この辺は今後の課題だよ。
さて、初日はこんなところかな。また2日目以降も戦績とハンドレビューをアップしていく予定だよ。またね!
収支(1日目) +$280.00
【上級編】ポットコントロールとディレイCB part1
上級編って何をやるの?
さて、今回からいよいよ上級編だね。
上級編ってどんなことをやるの?
実はね、初級・中級・上級はそれぞれテーマがあるんだ。
初級編のテーマは「どんなレンジで戦うべきか」だよ。特にプリフロップのオープンレンジ・コールレンジなんかだね。
ふむふむ。
中級編のテーマは「相手のレンジを考える」だったんだ。
レンジのヒントやボードテクスチャから相手のレンジを考えて、自分のハンドの強さ(エクイティ)を測ろう!というのがメインテーマだね。
ああ、そういえばそうだったね。
そして上級編のテーマは「相手から見た自分のレンジを考える」だよ。
上手いプレイヤー同士が戦うと、お互いが相手のレンジやエクイティを考え始めるんだね。そこで大事になってくるのが相手から見た自分のレンジなんだ。
例えば、この状況で相手から見た自分のレンジはとても強いから、自分のブラフは成功しやすいだろうとかね。
おお、確かにだんだん高度になってる気がするね。
うん、よりメタな考え方になっていくんだ。
そしてその一つの終着点がゲーム理論(GTO)だよ。お互いのプレイヤーが相手のレンジ・エクイティ・ポジション・スタックサイズを十分に考慮してより有利な戦略を使おうとすると、お互いにこれ以上戦略を変えようがないところまできちゃうんだね。また超上級編(GTO編)で解説するよ。
なるほど〜。今回はどんなことを話してくれるの?
今回は「相手から見た自分のレンジを考える」の最も基本的なパターン、ポットコントロールとディレイCBについて解説するよ。詳しくは次の章で!
ポットコントロールとは?
まずはポットコントロールについて説明していくね。チンアナゴちゃんは聞いたことある?
ないかなあ。どういう意味なの?
ポットコントロールのもともとの定義は「ポットを小さくしてローリスクでショーダウンを目指すこと」なんだ。
中でも特に「フロップやターンでショーダウンバリューがあるとき、ベットせずにチェックすること」をポットコントロールと呼ぶことが多いよ。
ショーダウンバリューがあるってことは、真ん中ぐらいの強さ(マージナル)ってことだよね。そのときにチェックする、か。何か具体例が欲しいかも。
OK、こんなのはどうかな。
HJからAQoでオープンして、BBだけがコール。見てのとおり、フロップでミドルペアができたよ。
ほんとだ。それで、BBがチェックしたところなのかな。
うん、そうだね。チンアナゴちゃんがHJだったらどうする?ベット?チェック?
うーん、相手(BB)のレンジと比べて私のAQってどのくらい強いんだろう。それがわかんないと、正しいアクションもわかんないよ。
そうだね。まさに中級編で解説したハンドの強さを測ろうってことだよね。じゃあ、今回はボードテクスチャを使ってAQの強さを測ってみようか。
オッケー。
KQ4はそこそこドライなボードだね。ドライなボードのときは「まあまあのキッカーのセカンドペアが真ん中の強さ」だよ。覚えてるかな。
うん、ボードテクスチャの記事で言ってた気がする。
もしBBがタイトなプレイヤーでないならば、って条件つきだけどね。
じゃあ、AQはキッカーが強いセカンドペアだから・・・真ん中より少し強いくらい?
うん、僕もそう思うよ。大体65%くらいの勝率なんじゃないかな。
じゃあ、AQでバリューベットを打っちゃう!BBは弱いQのペアかもしれないし、ストレートドローかもしれないしさ。
そう、それが中級編までのレンジとエクイティを使ったやり方だったんだね。
でも、ポットコントロールの考え方からいくと、ここはチェックなんだ。
あらら。どうしてなの?
実はこのBBは相手のレンジを考えてプレイできる上手いプレイヤーなんだよ。
だから、もしBBがQTなんかの弱いQを持っていたとしても、フロップ・ターン・リバーの3ストリートでバリューベットにコールしてくれそうにないんだ。
あ、BBから見たHJのレンジが強そうだから、途中でフォールドしちゃうってことか。
うん、そうだね。HJがオープンしたレンジはとても強くて、AA・KK・QQ・AKなんかの強いハンドが入ってるからね。逆にプリフロップで3ベットをせずにコールドコールしたBBのレンジには、そういう強いハンドは入ってないんだ。
うんうん、そうだよね。
改めてHJの視点に戻ろうか。HJはセカンドペアで3回バリューを取ることが難しそうなんだ。それならフロップはチェックしておいて、ターン以降で2回バリューを取るプランのほうがいいかもしれないよ。
それにフロップでチェックすると、ターンでBBはブラフを打ってくれるかもしれないから、それにコールすれば得だしね。
BBがターンでブラフを打つハンドって、どんなのがあるの?
色々あると思うよ。BBはJTとかATみたいなストレートドローでブラフするかもしれないし、もしかしたら87sみたいなエアーかもしれない。
なぜなら、BBから見たHJがチェックするレンジには99、A4sみたいな弱いペアが入ってるからね。そういうまあまあのエクイティがあるハンドをBBはブラフで降ろしたいんだよ。
ふむふむ、セカンドペアで3回バリューが取れない、チェックすればBBはブラフを打ってくれるってのがポイントなんだね。
でもさ、相手がドロー系のハンドを持ってるなら、やっぱりフロップでベットしたくなっちゃうよ。ダメなの?
ドローに対するプロテクトベットってことだよね。そのベットにBBがコールとかフォールドをしてくれたらいいんだけどね、レイズされるとAQのHJはキツイよ。
BBがチェックレイズしてくるかもってこと?
うん。例えばプロテクトベットに対してBBが3、4倍のサイズにチェックレイズすると、セカンドペアのHJはコールすることができないんだ。
ふーむ、コールするとどうなるの?
それだとBBはセミブラフだけじゃなくてツーペア、セット、TPGK(トップペア・グッドキッカー)なんかのハンド混ぜてチェックレイズをする戦略が取れるんだ。そうすればHJからかなり大きなバリューが取れるよ。
つまり、HJはマージナルなセカンドペアでCBを打ったり、さらに相手のチェックレイズにコールするのはやりすぎなんだ。相手のチェックレイズ戦略にアジャストされちゃうんだね。
そっか、CBの記事で言ってたね。CBの打ちすぎはレイズに弱いって。
そうなんだよ。このCBの打ちすぎとチェックレイズの話は大事だよ。
そうだ、せっかくの上級編だし、エクイティとEV(期待値)の観点からも今の話を説明してみようかな。
ほほう、エクイティとEVというと?
セカンドペアみたいなマージナルなハンドはね、そもそもチェックしたときにもある程度のエクイティがあるんだ。
うんうん。
でも、そこで特にIPからベットしてしまうと、OOPの相手にレイズする権利を与えてしまうんだ。そうすると、レイズされたときに自分が持ってるエクイティを捨てなきゃいけなくなるんだね。
だから、エクイティがそこそこあるからといって常にベットしていると、相手の有利な戦略にアジャストされてしまって、結果的にEVがマイナスになってしまうんだよ。
えーっと・・・エクイティがそこそこあるからといって常にベットしてると、レイズとかに降ろされちゃってそのエクイティがパーになるから、期待値的にはマイナスってことか。
そういうこと!中級編はレンジとエクイティの話がメインだったけど、そればっかりやってると上手いプレイヤーに読まれてアジャストされちゃうんだね。
うーん、難しいゲームだなあ。結局ポットコントロールって一言で言うと、どういうことなの?
うん、じゃあ次の章でポットコントロールの総まとめをしようか。
レンジを広く保つ:ポットコントロールの極意
さて、前の章ではポットコントロールについて具体的なシチュエーションを引き合いに出して説明してみたよ。
ここでは「ポットコントロールって結局何なの?」とか「いつ、どんなときにポットコントロールをすればいいの?」なんかのもっと一般的な話をしてみようかな。
うん、それ知りたい!
ポットコントロールを一言で言うとね、チェックするレンジを広く保つことで、相手に簡単にアジャストされないようにするテクニックなんだ。
チェックするレンジを広く保つ?
うん、つまりね、すべてのペアやドローでベットしてると、自分のベット頻度が高いことが相手にバレちゃって、相手に簡単にアジャストされるんだ。
ああ、さっきの章の話だと、ベットしすぎはチェックレイズで対応されちゃうってことなんかな。
うん、そのとおりだね。あと、ベットせずにチェックしたときもマズい展開になるよ。だって、すべてのペアやドローでベットするプレイヤーがチェックしたってことは、ほとんどエアーしか持ってませんって宣言してるようなもんだからね。
た、確かに。エアーしか持ってないプレイヤーにはベットすればいいだけだもんね。
そう。ベットしようがチェックしようがアジャストされてしまうんだよ。
じゃあどうするかというと、そこそこのエクイティがあるハンドやすごく強いハンドをチェックに回せばいいんだね。
例えばどういうハンド?
そこそこのエクイティがあるハンドは弱いペアとかAハイ、すごく強いハンドはドライなボードのトップセットなんかだね。もちろん、すごく弱いエアーでもチェックすることもあるよ。
ふむ、強いハンド=ベット・弱いハンド=チェックっていうふうに分けずに、いろんなハンドをチェックするレンジにバランスよく混ぜておくってことか。
まさにそういうことだよ。そうすればアクションや頻度からアジャストされにくくなるからね。
「そこそこエクイティがあるハンド」をチェックに回すことをポットコントロール、「すごく強いハンド」をチェックに回すことをスロープレイっていうんだ。
なーるほど!
相手から見た自分のチェックするレンジを広く保つ
=そうすると相手は簡単にアジャストすることができない&次のストリートで相手のブラフをキャッチできる
=結果的にセカンドペアみたいなハンドのエクイティが実現しやすくなる
これがポットコントロールだよ。
ふむふむ。それは確かに上手いプレイヤーに対して効きそうだね。
ついでに言えば、チェックすると相手はレイズする機会を失うわけだから、結果的にポットは小さくなりがちだよね。だからマージナルなハンドで大きなポットに参加してコミットしないようにすることもポットコントロールの目的の一つだね。
ねえ、どんなときにポットコントロールって狙えばいいの?
OK。じゃあポットコントロールのチェックリストを作ってみようか。次の項目に当てはまるような状況はポットコントロールがおすすめだよ。
- 自分のハンドはマージナル(勝率が40%〜60%あたり)である
- 自分はIPである
- 3ベットor4ベットポットなのでSPR(スタックとポットの比)が小さい
- 比較的ドライなボード、あるいは相手のレンジにドローが少ないことがわかっている
- 相手はほかのプレイヤーのレンジや自分のハンドのエクイティを考えられるプレイヤーである
- 相手はアグレッシブなプレイヤー(ベットやレイズが多い)である
こんなところかな。六つ全部当てはまらなくてもいいよ。四つか五つ当てはまればポットコントロールが正解になることが多いんじゃないかな。
最後の「相手がアグレッシブなプレイヤー」ってのはどうして?
ポットコントロールせずにベットしてると、アグレッシブなプレイヤーからチェックレイズが飛んでくるからだよ。チェックレイズにコールして、ターンでもベットを打たれて・・・ってのは嫌な展開だよね。相手が上手いプレイヤーじゃなくても、思考停止でアグレッシブにベットやレイズをされるだけでキツいんだよ。
うーん、それは確かに嫌だね。
それならフロップはポットコントロールでチェックして、ターンとリバーでアグレッシブなプレイヤーのブラフをコールしたほうがよさそうだよね。
うむ、確かに。
ただし、相手がコーリングステーションなら別だよ。ドロー系のハンドや弱いペアで何度もバリューベットにコールしてくれるなら、それはポットコントロールをする必要はないからね。素直にベットするのがいいと思うよ。
ということで今日のまとめッ!
今日のまとめ
- 上手いプレイヤーと戦うときは「相手から見た自分のレンジ」を考えよう!
- ポットコントロールは「自分のチェックレンジを広く保つこと」。そうすることで相手にアジャストされにくくなるんだ
- いつ、どんなときにポットコントロールをするべきかのチェックリストを作ってみたよ
次回はポットコントロールの番外編・ディレイCBについて解説していくよ。
【中級編】プレイスタイルとアジャスト part2 〜コーリングステーションとLAG〜
プレイスタイルごとのアジャストが大事!
前回は簡易的アジャストとGTO的アジャストの2種類のアジャストについて話をしたよ。
簡易的アジャストはレンジ・プレイライン・ポジションの三要素が大事なんだったね。
アジャストってまじめに考えたことなかったけど、奥が深いんだねえ。
これまで【初級編】と【中級編】でプリフロップのレンジやポストフロップの戦い方を説明してきたけど、次につまづきやすいのがこのアジャストなんだ。
よくありがちなのが、「自分だったらこうプレイする、だから相手のハンドはこうだ!」って考えちゃうことだね。
ああ、それよくやっちゃうかも。
ポーカーに慣れてくると自分の戦い方が固まってくるから、相手にもそれを求めちゃうんだね。でも、それは根拠のない思い込みなんだ。相手は相手の論理でポーカーをやってるからね。
だから「このタイプの相手だったらどうするか」を常に考えないといけないんだ。
ふーむ。それで相手がどういうタイプなのかが大事なんだね。
そういうこと!今回はカジノによくいるプレイスタイルのコーリングステーション(ルースパッシブ)とルースアグレッシブを取り上げるよ。
この二つのスタイルにうまくアジャストしてみよう!
コーリングステーション(ルースパッシブ)のアジャスト
まずはコーリングステーション(ルースパッシブ)の簡易的アジャストから見ていこうか。
今日はね、私が見込んだピカイチのコーリングステーションを連れてきたよ!
ふふふ、ジョーズくんにアジャスト方法を教えてもらおっと。
チンアナゴちゃんの人間関係が心配だよ。
おーい、こっちこっち!
こんにちは・・・。
あ、どうも。はじめまして。
友達のクラゲちゃん!小中高と一緒だったんだ。
休日は図書館とか植物園で過ごすのが好きです・・・。
クラゲちゃんは昔っから流されやすくて、押されるとそのままズルズルいっちゃうタイプなんだよねえ。
なるほど、典型的なコーリングステーションだね。じゃあ、ポーカーについて話を聞いてみようか。
ポーカーはたまにチンアナゴちゃん達とやるんですけど、あんまり勝ったことはないかな・・・。いろんなハンドで参加してみて、強い役ができればうれしいです・・・。
相手の方にベットされても、ペアかドローがあればついついコールしてしまいます・・・。
いえ、ダメなのはわかってるんですけど、まあいいかなって・・・。
あ、あとリンプインも好きです・・・。スーテッドとかポケットペアを持ってると、フロップを見てみたいなって・・・。大人数で皆さんと一緒にフロップを見るのが好きです・・・。
案外しゃべり出すと止まらないね。
根はおちゃめな子なんだよ。
OK、じゃあコーリングステーションの特徴をまとめてみようか。
- スタッツの例(6max):40/5/0.5/40(VPIP/PFR/AF/WTSD)
-
広いレンジで参加しがち(ルース)だが、ベットやレイズは少ない(パッシブ)
- レイズは非常に強いハンドでしかしない
-
ボトムペアやドローなど、真ん中の強さ(マージナル)よりも弱いハンドでベットに対してコールをする
-
リンプインしがち
スタッツの見方はこの記事を参考にしてね。
なーるほど。確かにクラゲちゃんそのものだね。
それでアジャストはどうすればいいの?
これがコーリングステーションに対する簡易的アジャストだよ。
- レンジをタイトにし、ショーダウンの勝率を高くする。
=コーリングステーションはなかなかフォールドしないため、頻繁にショーダウンまでいってしまう。(WTSDが高い) -
ブラフの頻度を下げる。ただし、IPからのフロップのセミブラフは有効な場合がある。ドローが引けなかった場合、ターンはチェックする。
=コーリングステーションはなかなかフォールドしないため、ブラフが利きにくい。 -
TPTKやツーペアなどの強いハンドで大きくバリューベットを打つ。
=普通ならフォールドされてしまうベットサイズでも、コーリングステーションはコールする。 -
シンバリューベットを打つ。
=マージナル以下のハンドにコールしてもらう。 -
プリフロップのリンプインに対してレイズ(アイソレート)する。ベットサイズは最低でも「3bb+(リンプインしている人数×1bb)」。
=リンプインしているプレイヤーに対してIPにいる場合は、特に広いレンジでアイソレートできる。アイソレートする際のハンドは投機的なものよりも勝率の高いものを選ぶ。88+、ATo+、KJs+など。 -
コーリングステーションがレイズをしてきたときはTPTKでもフォールドする。ナッツ級のハンドを持っているときはレイズに対してリレイズオールインする。
=コーリングステーションはレイズやベットの頻度が低く(AF<1)、特にブラフのレイズ頻度が低い。そのため、コーリングステーションのレイズにはプリフロップではAA、KKなどのプレミアハンド、ポストフロップではツーペア以上などの強いハンドが多く含まれている。
ふむふむ。全体的に大きくバリューを取って、ブラフは控えめにするのがいいんだね。
そういうことだね。コールしすぎるのがコーリングステーションの特徴であり弱点だよ。
ねえ、何かアジャストの具体例を出してよ。
OK。例えばこんなのはどうかな。BBがコーリングステーションだよ。
- プリフロップ
SBはOOPでポットを大きくすることがIPと比べて難しいので、少し大きめの4bbにオープンした。 - フロップ
ウェットなボードでドローが多いため、コーリングステーションからバリューを取れるハンドが多くなっている(K、Tのペア、ストレートドロー、フラッシュドロー)。そのため、大きめのバリューCBを打った。 - ターン
9はQJのストレートを完成させ、T9をツーペアにさせるカードだが、依然としてコーリングステーションのレンジにはKQ、KJ、JT、QT、フラッシュドローなどのAAより弱いハンドが多数ある。
それらのハンドは9によってさらにアウツが追加されているため、そうしたハンドからバリューを取るために大きなベットを打った。
ここでBBからレイズが返ってきたらQJ、KT、T9、44などが濃厚なのでフォールドすべき。 - リバー
4が落ちたことでKQやKJはフラッシュになるが、そうしたハンドはBBのレンジの中のごく一部であり、大半はフラッシュでないKQ、KJ、K8、AT、QT、JTなどのワンペアか、ターンでレイズしなかったKT、K9、T9などのツーペアである。リバーの4でSBはトップツーペアを手に入れたため、BBの大半のレンジには勝っており、バリューベットができる。
SBのレンジには引けなかったハートのフラッシュドローがあり、さらにBBはコーリングステーションであることを考慮して、SBはバリューのオーバーベットを打った。
解説は上の青いボックスをクリックしてね。
すっごい勢いでベットするんだね。
もう一つ見てみようか。今度はHJがコーリングステーションだよ。
- プリフロップ
広いレンジを持つ2人のリンプインに対してBUのAJsは勝率が高く、さらにIPが確定しているため、アイソレートのためのレイズをした。
サイズは3bb+(2×1bb)=5bb。 - フロップ
TPTKはコーリングステーションに対して十分バリューベットが打てる。
しかしボードはややドライでバリューターゲットがJ、8、5のペア、ストレートドローのT9、76しかいないため、ベットサイズはポットの60%程度にした。 - ターン
QはT9のストレートを完成させ、QJをツーペアにさせる。
KJ、JT、J9などのワンペアや76からバリューを取ってもいいが、ターンのQはそうしたハンドにとってもスケアカード(相手にとって有利に見えるカード)であるので、大きなベットを打つとフォールドされる可能性もある。
BUがベットすると、AJよりも強いハンドにしかコールされないかもしれないので、今回はチェックした。 - リバー
Qが落ちたことによりHJのQJやQTのコンボ数が減った。また、HJがQJやQTを持っている場合、リバーでバリューベットを打つこともあるはずだがチェックしているので、二重の意味でHJがQを持っている可能性は低くなった。
そのため、BUはJのペア、8のペアなどのバリューターゲットに向けてシンバリューベットを打った。
こっちもアグレッシブにベットしていくんだね。
二つともポイントはリバーのベットだよ。
こういうところで恐れずにコーリングステーションに対してベットしていけば、長期的に見てアジャストすることができるからね。
ルースアグレッシブLv.1のアジャスト
さて、次にルースアグレッシブLv.1(LAG Lv.1)の簡易的アジャストについて見ていこうか。
Lv.1ってのはなに?レベル1?
うん、実はね、LAGはうまくやればすごく強いプレイスタイルなんだ。
ルースだけどバランスの取れたレンジにしたり、相手のプレイスタイルを観察して特定の相手に対してだけアグレッシブにプレイするとかね。
でも、今回紹介するのはカジノの低レートによくいるような、まあ、こう言っちゃなんだけど、下手なLAGだね。僕はLv.1とLv.2で区別してるよ。
おっけー!じゃあ今日連れてきたのは多分Lv.1だから大丈夫!
じゃあ、次の方どうぞ。
まいど!おはようさん!!
はい、おはようございます。
うちの上司だよ。
課長、こちらジョーズくん。私のポーカーの先生です。
課長補佐やけどな!いやあ、ポーカーの先生なんやてね。ええなあ、ワイも学ばせてもらおかな!ガツーンと稼いで会社辞めたろかい!ダーッハッハ!
ははは。
この人いつもこんな調子なんだよ。
こりゃまた典型的なLAGだね。じゃあ、ポーカーについて話を聞いてみようか。
ポーカーってのはな、チップを積んだやつがいっちゃん強いねん。ハンドなんか関係あらへん。相手がチェックやらコールで弱み見せたらバチーン行ったりゃええねん!ま、一種のチキンレースやな!
チキンレースいうてわかるか?今の若い子は知らんかもしれへんけど、昔、ジェームズ・ディーンの『理由なき反抗』いう映画があってやな、崖に向かって車を走らせるあの有名なチキンレースはこの映画が元ネタやねん。ワイがちっさい頃の金曜ロードショーはこういう過去の名作をよう流しとった。せやけど最近はようわからへん漫画原作の邦画かジブリの連発やろ?あれはあかんわ。
OK、じゃあLAG Lv.1の特徴をまとめてみようか。
私はジブリうれしいけどなー。
- スタッツの例(6max):30/15/4/30(VPIP/PFR/AF/WTSD)
- 広いレンジで参加し(ルース)、積極的にベットやレイズをする(アグレッシブ)。
- フロップ、ターンのCB率が高い。トリプルバレルを打つこともしばしばある。
- 特に相手がチェックやコールをして弱みを見せると、どんなハンドを持っていてもベットする。
- アウツがないエアーハンド、マージナルでショーダウンバリューがあるハンドでも構わずベットする。
ふむ、確かに課長はこんなスタイルだね。それでそれで?どうやってアジャストすればいいの?
これがLAG Lv.1に対するアジャストだよ。
- LAGよりもタイトなレンジで戦い、ショーダウンの勝率を高める。
- IPで戦う。OOPでLAGの3ベットにコールしたり、フロートをしたりするのは控える。
=LAGはベット率が高く、OOPでAハイやミドルペアなどのマージナルなハンドを持っているとき、何度もベットにコールするのは難しい。 - LAGの左隣に座る。よりIPを取りやすい位置に座る。
- LAGのオープンに対して、通常よりも少し広いレンジで3ベットを打つ(ライト3ベット)。
=プリフロップは3ベットの頻度を高めることでルースなオープンに対応する。 - LAGのベットに対して、強いハンドまたはドローハンドでレイズする。
=ポストフロップではレイズとスロープレイを使い分ける。ウェットなボードの場合、ルースアグレッシブのベットに対してオーバーペアやツーペアのような強いハンドと、フラッシュドロー・ストレートドローなどの弱いハンドを混ぜてIPからレイズする。 - LAGのベットに対して、強いハンドでコールする(スロープレイ)。
=ボードがドライなとき、TPTK+のような強いハンドはスロープレイに回し、LAGのベットにIPからコールし続ける。
ふむ。コーリングステーションと比べてちょっと複雑だね。
まず、LAGへのアジャストで一番大事なのはポジションだよ。IPで戦うことが何よりも重要なんだ。
ふーん。どうしてなの?
LAGはベット率が異常に高いよね。
ということは、例えばOOPでマージナルなハンドを持ってても、LAGのベットに何度もコールできないんだ。
別の言い方をすれば、ポジションが悪いとエクイティを実現しにくいんだね。
そりゃそうだよね。ミドルペアやAハイじゃあ、トリプルバレルにコールなんてできないもん。
そういうアグレッシブなプレイヤーにアジャストするためには、ベットにリスクを負わせる必要があるよね。そこでIPからのレイズやスロープレイが有効になってくるんだ。
プリフロップではライト3ベットでルースなオープンにリスクを負わせられるよ。
ポストフロップでは強いハンドとドロー系のハンドを混ぜてレイズしたり、ドライなボードではセットやツーペアでスロープレイをすることで、LAGのベットにリスクを負わせられるんだね。
ふーむ、何かアジャストの具体例を出してよ。
OK、こんなのはどうかな。COがLAGだよ。
- プリフロップ
COのLAGは広いレンジでオープンしてきており、自分はIPが確定している。
ここではコールではなく3ベットを打つことでルースなオープンにアジャストしようとした(ライト3ベット)。 - フロップ
LAGのドンクベットはJJ、TT、99などのオーバーペア、7のワンペア、65のストレートドロー、4のトリップスなどのほかに、Kハイ、Qハイなどの弱いハンドも含まれていると考え、今回はフラッシュドローでブラフレイズした。
おおー、こっちもアグレッシブにいくんだね。
大事なポイントはAA、KK、QQなどでも同じプレイラインを取るってことだよ。
プリフロップはもちろん3ベットを打つし、ポストフロップもLAGのドンクベットに対してレイズするべきだよ。すごく広いレンジでLAGはドンクベットを打ってる可能性が高いからね。
こういうふうに、強いハンド(オーバーペア)と弱いハンド(フラッシュドロー)を混ぜてレイズすると、LAGはもうどうしていいかわかんなくなるよね。
なるほど、LAGのベット打ちまくり作戦を無効にしちゃうんだね。
もう一つ見てみようか。今度はLJ(MP2)がLAGだよ。
- プリフロップ
88はLAGのルースなレンジに対して十分強いかもしれないが、今回はアーリーポジションからLAGはオープンしているので、案外タイトなレンジかもしれない。今回はコールを選択した。 - フロップ
88より強いハンドはAAのみ。ここでLAGのCBに対して88がレイズすると、Kハイ、Qハイ、弱いペア、T9などをLAGが持っていた場合、フォールドされてしまう可能性がある。
また、ドライなボードなので、ターン以降で88が逆転される可能性はかなり低い。
そのため、CBに対して単にコールするスロープレイを今回は選択した。 - ターン
ターンのQで88が逆転されたとしたらLAGがQQを持っている場合のみ。レアケースなので、フロップで88が勝っているならターンでも勝っている可能性が高い。
ただし、スペードのフラッシュドローやストレートドローをLAGが手に入れた可能性はある。
88はスロープレイを続けるか、ダブルバレルにレイズするかの選択だが、Aハイボードはプリフロップ・アグレッサーであるLAGのレンジに有利であるので、LAGはリバーでもブラフベットを打つ可能性が高いと読み、今回はスロープレイを継続した。 - リバー
88はAA、QQ、65、スペードのフラッシュに負けているが、ツーペアや7のセットには勝っており、LAGのレンジにはブラフもあることがわかっているので、ここでの選択は明らかにコールかレイズである。
今回は負けているハンドが多いので、単にコールを選択した。
これはスロープレイの例だったね。
なるほど〜!単純に3回コールしたように見えるけど、結構いろいろ考えてるもんだね。
今日紹介したコーリングステーションとLAG Lv.1は、どちらもカジノでよく見るプレイスタイルだよ。
アジャストの戦略を立てたいなら、まずはこの二つを押さえておきたいね。
そういえば、どちらのアジャストもタイトなレンジになってたね。
そう。だから初級編でおすすめしたオープンレンジや3ベットレンジは、かなりタイトなものになってるんだね。
じゃあさ、もしもカジノでそういうタイトなプレイヤーに遭遇したらどうすればいいの?
大丈夫。タイトなプレイヤーを狩るためのアジャストもちゃんとあるのさ。
次回に一緒に見ていこうね。
今日のまとめッ!
今日のまとめ
- 「このタイプの相手だったらどうするか」を常に考えてアジャストしよう!
- コーリングステーションの特徴と簡易的なアジャスト方法を紹介したよ
- ルースアグレッシブLv.1の特徴と簡易的なアジャスト方法を紹介したよ
- どちらもタイトなレンジで戦うことが大事なんだ
- 次回はタイトなプレイヤーに対するアジャストを紹介するよ!
相手がどのプレイスタイルかを見極めるためには、相手がショーダウンしたハンドがヒントになるよ。
【中級編】シンバリューベット
シンバリューベットとは?
今回はシンバリューベットを打つときのポイントについて詳しく見ていくよ。
バリューベットはわかるけど、「シン」ってなんなの?新?真?神?
OK、まずはシンバリューベットの定義から説明しようか。
例えば、フルハウスみたいなナッツ級のハンドはいつも大きなバリューベットが打てるよね。
でも、ポーカーはそんな強いハンドがホイホイ来るもんじゃないんだ。
だよねー。毎回ナッツ来い!って念じるけど、たいていダメなんだよなあ。
ポーカーは勝ってるか負けてるか微妙な状況がほとんどなんだね。
そこで大事になのが「ナッツ級ではないけど勝つ見込みがあるハンドで小さなバリューベットを打つこと」なんだ。これがシンバリューベット(Thin Value Bet)だよ。
「シン」は「薄い(Thin)」って意味だね。
ふーん。100%勝ってる!とは言い切れないけど、まあまあ勝ってることも多そうだし、薄いバリューベットを打つかってノリなんだね。
うん、基本的にはそういうことだね。シンバリューベットの具体例は次の章で!
シンバリューベットはこんなときに打とう!
じゃあ、実際にシンバリューベットを打ってみようか。このハンドを見てごらん。
※クリックでgifが再生・停止します。
BUはKcJdで3bbにオープン、コーリングステーションのBBがコールしてヘッズアップです。
フロップ:Jh8h5c(6.5bb)でBBはチェック、BUは5bbのCBを打ちました。BBはコールします。
ターン:As(Jh8h5cAs 16.5bb)でBBはチェック、BUもチェックします。
リバー:3s(Jh8h5cAs3s 16.5bb)でBBはチェック、BUは6bbのシンバリューベットを打ち、BBはコール。8c7cをショウしました。
BUがリバーで打った6bbがシンバリューベットだよ。
へえ、KJはAのペアとかツーペアに負けてるけど、小さなバリューベットが打てるんだね。
実はこのBBはコーリングステーションなんだ。相手のベットやレイズに弱いハンドでコールしちゃうし、大抵は広いレンジを持ってるよ。
あと、プリフロップで1bbをコールして参加(リンプイン)するプレイヤーもコーリングステーションに多い印象だね。
シンバリューベットは特にコーリングステーションに対して打つと成功しやすいんだ。
ふむふむ。BBは何でもかんでもコールするスタイルだから、「KJより弱いハンドでもコールしてくれるのでは?」って見通しが立つんだね。
そういうこと!今回は87(8のワンペア)でコールしてくれたね。
ねえ、今回は8のワンペアだったけどさ、BBはほかにどんなハンドでコールするのかな?
いい質問だね。リバーのシンバリューベットにコール(orレイズ)するハンドは、例えばこんな感じじゃないかな。
- (セット:(JJ)、88、55、33)→レイズ
- (ツーペア:AJ、A8、A5、A3、J8s)→コールorレイズ
- Aのワンペア:(AK)、(AQ)、AT、A9など
- BUのKJoはココ!
- Jのワンペア:QJ、JT、J9、J7s
- T以下のワンペア:(TT)、(99)、Q8、87、77、66など
カッコがついてるのは持ってる可能性が低いハンドだよ。
例えば、BBがツーペアのAJを持ってるなら、リバーはチェックせずにバリューベットをするはずだよね。でも今回はチェックしてるから、BBがAJを持ってる可能性は低いんじゃないかな。
セットのJJはさらに持ってなさそうだよ。JJを持っていたらプリフロップでまず3ベットを打つこともあるだろうし、フロップでBUのCBに対してレイズしてもいいはずだよね。だからこのBBのアクションからすると、JJを持ってる可能性はほぼゼロだよ。それでJJには二重にカッコがついてるんだね。
なるほど〜。BUのKJはAのワンペアの次に強いんだね。セットとツーペアはカッコがついてるから、あんまり持ってなさそうと。
うん、そういうことだね。シンバリューベットにコールしてもらいたい対象(バリューターゲット)は「KJより弱いワンペア」ということになるよ。
でもコールされてAのワンペアが出てきたらショックだなあ。「それならチェックしときゃよかった・・・」ってならない?
もちろんBBがAやJ8を持ってることもあるよ。でも、コーリングステーションだから弱いハンドを持ってることのほうが多いんだ。だから、シンバリューベットを打つほうが長期的には得だと思うよ。
ほら、この画像を見てごらん。
相手のレンジを可視化してみたよ。BUのKJがどのくらいの強さで、どんなバリューターゲットに対してシンバリューベットを打つのか、これならわかりやすいんじゃないかな。
確かに、バリューターゲットにはKJより弱いハンドがたくさん入ってるね。
あと大事なのがベットサイズだね。シンバリューベットのサイズはポットの1/3程度がおすすめだよ。
1/3って結構ちっちゃいサイズだね。でもどうしてなの?
あまりにも大きなベットをすると、66とか87sみたいな弱いハンドはコールしないかもしれないんだ。
逆に、BBがAのワンペアやツーペアを持ってたときは、大きなベットをすると被害が大きくなっちゃうんだね。どっちにしろ損だから小さいベットで十分なのさ。
ふむふむ。ところでさ、BBがシンバリューベットに対してレイズしてきたらどうするの?
絶対にフォールドだよ。BBがここでブラフしてる可能性はかなり低いからね。
そうなの?どうして?
例えばBBがQTみたいなハンドを持ってるとすると、リバーでブラフベットをしてもいいはずだよね。でもBBはあえてチェックしてるんだ。BUがチェックしてショーダウンになったらほぼ負け確定なんだから、かなりトリッキーなプレイになるよね。
それに、BBは弱いハンドでもコールしたがるんだから、例えば65sみたいな弱いペアをブラフに変えてレイズしてるとも、ちょっと思えないよね。
なるほど、そういう読みがあるんだね。
これがシンバリューベットだよ。せっかくだからもう一つ例を見てみようか。
3ベットポットでのシンバリューベット
さて、今度は3ベットポットでのシンバリューベットだよ。このハンドを見てごらん。
※クリックでgifが再生・停止します。
コーリングステーションのCOが3bbにオープン、BBはJhJcで12bbの3ベットを打ちました。COはコールし、ヘッズアップです。
フロップ:6d4d4s(24.5bb)でBBは15bbのCBを打ち、COはコールします。
ターン:3h(6d4d4s3h 54.5bb)でBBはチェック、COもチェックします。
リバー:6s(6d4d4s3h6s 54.5bb)でBBは18bbのシンバリューベットを打ち、COはコール、AhQsをショウしました。
これもさっきの例と同じで、BBがリバーで打った18bbがシンバリューベットだね。相手のCOはコーリングステーションだよ。
今度はボードに6と4のペアができてるね。相手がどっちか持ってるとフルハウスができてるから、私ならチェックしちゃうかなあ。
確かにフルハウスは怖いね。COはフロップのCBにコールしてるから、6を持っててもおかしくないよ。でもね、今回は3ベットポットだから、6や4を持ってる可能性はそこまで高くないんだ。
どういうこと?
いくらコーリングステーションとはいえ、76oやA4oで3ベットにコールしにくいよね。持ってるとすれば76sやA4sなんかのスーテッドなんじゃないかな。
もちろん、オフスートの6や4もあるかもしれないけど、オープン−コールの2ベットポットと比べると、格段にその可能性は低くなるんだ。
ふーん。6や4はあまり持ってないとすると・・・じゃあCOはどんなハンドを持ってるの?
ポケットペア、ダイヤのフラッシュドロー、あとはAKやAQなんかのAハイだと思うよ。今回はこれらのハンドがバリューターゲットなんだ。
今回の相手のレンジを可視化するとこうなるよ。JJはフルハウスやQQには負けてるけど、弱いポケットペアやAハイには勝ってるね。
AAやKKは3ベットにコールせずに4ベットしてるはずだからいないんだね。
ところで、シンバリューベットにレイズを返されたらどうするの?これもフォールド?
これはさっきの例と違ってアクションのレンジのヒントが使えないから、ちょっと難しいね。
でも、相手はコーリングステーションでブラフレイズがほとんどないことを考えると、フォールドが無難だと思うよ。
おっけー。っていうか、COはAハイでベットにコールしたんだね。よくそんなのでコールするなあ。
3ベットを打った僕のレンジにはAKやAJsが入ってるからね。同じAハイでフォールドしたくなかったのかもね。
これがコーリングステーション・・・。なんておいしいプレイヤーなの・・・。
でも、逆に言えばコーリングステーションに対してはブラフが通りにくいからね。そこには注意だよ。
というわけで今日のまとめッ!
今日のまとめ
- シンバリューベットとは「ナッツ級ではないけど勝つ見込みがあるハンドで小さなバリューベットを打つこと」!
- 真ん中の強さ(マージナル)よりも少し強いハンドでシンバリューベットを打とう!ハンドの強さを測る技量が試されるよ
- 特に相手がコーリングステーションのとき、シンバリューベットは成功しやすくなるんだ
- シンバリューベットのベットサイズはポットの1/3が目安
- シンバリューベットは「ベットフォールドライン」!ベットしてレイズされたら基本的にはフォールドはするべきだよ
シンバリューベットは特に長いスパンで収支を見たときに大事になってくるよ。
【中級編】プレイスタイルとアジャスト part1 〜2種類のアジャスト〜
そもそもアジャストとは?
今回のテーマはズバリ「プレイスタイルとアジャスト」だよ。大事なテーマだから3回に分けて解説していくね。
プレイスタイルはタイトとかアグレッシブとかのことだよね。でも、アジャストってなに?
アジャスト(adjust)は相手の戦略に対してより有利な戦略(メタ戦略)を用いることだよ。
ふーむ、具体的には?
例えばルースアグレッシブ(LAG)って聞いたことないかな。すごく広いレンジでオープンして、フロップ・ターンで毎回大きなベットを打ってくるようなプレイスタイルだよ。
ああ、そういう人と戦うのは苦手だなあ。いっつもフォールドさせられちゃうよ。
LAGに対してフォールドしすぎると相手の思うツボなんだ。
だからレンジを調節したり、レイズの頻度を上げたりして対応しなきゃいけないんだね。
そうやってメタ戦略を適切に使えば、短期的には運悪く負けることはあっても、長期的には期待値をプラスにできるんだね。それがアジャストだよ。
いいじゃん!もっと詳しく知りたいかも。
OK、次の章で詳しく説明していくね。
アジャストの方法は二つ!
さて、プレイスタイルの分類と具体的なアジャスト方法は長くなるから次回にしようかな。今回は「そもそもアジャストってどんなやり方があるの?」っていう概論的な話をするよ。
はーい。
実はね、アジャストには二つのやり方があるんだ。
- 簡易的アジャスト=相手のプレイスタイルに基づいてレンジやプレイラインを調節し、全局面に対応する戦略を立てる
- GTO的アジャスト=特定の局面におけるGTO戦略と相手の戦略との「ズレ」を特定することで、その「ズレ」にアジャストする適切な戦略を立てる
先生、1番は何となくわかるけど、2番は何言ってんのかわかんないです・・・。
大丈夫、一つずつ解説していくから安心して。
まず、「簡易的アジャスト」だけど、これはさっきのLAGプレイヤーを例に考えてみようか。
毎回フロップやターンでベットしてくるってことは、彼は弱いハンドでもベットしてるはずだから、まずはレイズの頻度を増やすとアジャストできそうだと思わない?
そっか、LAGはどうせ大したハンドは持ってないんだから、「調子乗んな!」ってレイズしちゃえばその場でポットが取れるかもね。
うん。あと、プリフロップでも同じことが言えるよ。LAGはすごく広いレンジでオープンしてるんだから、それに対していつもより少し広いレンジで3ベットを打つのも有効そうだよね。
うんうん、確かに。
これが1番の「簡易的アジャスト」だよ。相手のレンジやベット頻度からプレイスタイルを想定して、いろんな局面に対応できるようなメタ戦略を立てるんだ。
うん、いいじゃん!っていうか、アジャストってそういうもんなんじゃないの?
実はこの「簡易的なアジャスト」には一つだけ問題があるんだ。
例えばさっきのLAGの話だとね、具体的にどんなハンドでレイズするべきかまではわからないんだよ。
いくら何でもすべてのハンドでレイズするのは良くなさそうだよね。実際にはコールしたりフォールドしたりするハンドもあるはずなんだ。
どんなハンドでレイズすべきか・・・。うーん、確かに難しそうだね。
例えばK53のボードでLAGから大きなベットを打たれたとき、76のコンボドローでレイズするのはいいかもしれないけど、A4だとどうなんだろう。フォールドすべきかもしれないよね。トップペアのKJはコール?レイズ?44はフォールド?まさかのレイズ?
「簡易的アジャスト」はこういう一つ一つのハンドを厳密に分析することはできないんだ。教えてくれるのは「レイズ頻度を上げればアジャストできそう」という全体的な方針だけなのさ。
うーむ、困ったね。どうすればいいの?
それを教えてくれるのが2番の「GTO的アジャスト」なんだ。
これはGTO(ゲーム理論最適化)をうまく使ったアジャスト方法で、具体的にどんなハンドでレイズ・コール・フォールドをすればアジャストができるかを教えてくれるよ。
すごい!どうやるの?
そもそもGTOとは「絶対にアジャストされない完璧にバランスの取れたプレイ」なんだ。
だから、相手のプレイやレンジがGTOから外れているとすれば、逆に言えばそれは「アジャストされ得るプレイ」と言えるわけだね。
な、なるほど・・・。GTOは絶対アジャストされないんだから、もしGTOじゃないプレイをしてるなら、それは何かの戦略でアジャストされちゃうってことなのね。
うん、そういうことなんだ。そしてその「何かの戦略」はGTO計算機で計算可能なんだよ。
相手の「GTOからのズレ」を考慮してGTOを再計算すれば、一つ一つのハンドでレイズが正解なのか、フォールドが正解なのか、あるいは何%をレイズにして何%をコールにするのか、具体的に教えてくれるのさ。
ほえー、よくわかんないけど、そんなこともできるんだね。
ところが、このやり方にも欠点があるんだよ。
確かにGTO的アジャストは厳密な答えをくれるんだけど、これは相手のポジション・スタック・レンジ・CB率などをいちいち設定して、具体的な状況を作り上げて初めて計算できるものなんだ。
だから、ゲーム全体を通してどうプレイすればアジャストできるのか、そういう全体的な方針は教えてくれないんだ。
うーん、イメージ湧かないなあ。もうちょっと詳しく教えて?
例えば、さっきのK53のボードでLAGがCBを打ったとするよね。
このときにKJを持っているなら、10%の頻度でレイズして、90%はコールすればアジャストできるとGTOが教えてくれたとするよ。
でも、GTOは別に「トップペアを持ってたらLAGに対して常に10%レイズしよう」と言ってるわけではなくて、ボードが変わればレイズする頻度も変わるだろうし、コールだけになることだってあるんだね。
つまり、設定した状況が変わればGTO的アジャストのやり方も変わるんだよ。
じゃあ、状況ごとにいちいちGTOの計算をしなきゃいけないってこと?
それができれば最高なんだけどね。でも、カジノでプレイ中に「今からパソコンでGTO計算するからちょっと待ってて」なんて言うわけにもいかないよね。
すべての状況でGTOを再現することは現実的じゃないんだ。
あちらが立てばこちらが立たずだね。
そうなんだよ。簡易的なやり方はゲーム全体のアジャストの方針を教えてくれるけど、精度はやや低いんだね。
一方で、GTO的なやり方は一つ一つの状況では精度の高いメタ戦略を教えてくれるけど、ゲーム全体の方針については教えてくれないんだ。
うーむ、なるほど。結局どうすればいいのさ?
個人的な考えだけど、ひとまずは簡易的アジャストだけで十分だと思うよ。
あ、そうなの?
うん。この【初級編】と【中級編】はカジノの低レートで勝ち越すための技術を紹介してるんだけど、そもそも低レートで戦うためにGTOのスペシャリストになる必要なんてないんだ。
それよりもバリュー・ブラフをきちんと理解してプレイしたり、一人一人のプレイヤーの弱点を見抜いて個別にアジャストしたり、バンクロール(資金)を適切に管理するほうがよっぽど大事だよ。それは断言できるよ。
そっか、ホッとしたかも。
プレイスタイルごとの簡易的アジャストを一通り学んで、実戦で悩んだハンドやよくあるシチュエーションが出てくれば、それをGTO的アジャストでちょこちょこ復習してみるといいんじゃないかな。
あくまでも簡易的アジャストをベースにしつつ、GTOを取り入れながら改良していこうってことだね。
おっけー!了解しました!
GTO的アジャストについてはここでは深入りしないけど、GTO計算機のNodeLock機能を使う方法や、混合戦略の頻度を調節する方法があるってことだけ言っておこうかな。
詳しくはまた【超上級編】(GTO編)でまとめるよ。
簡易的アジャストの三つのポイント!
さて、ここまではアジャストの定義・種類について解説してきたよ。
最後の章では簡易的アジャストについてもう少し詳しく見ていこうかな。
お願いしまーす。
簡易的アジャストのポイントは三つ。レンジ・プレイライン・ポジションだよ。
基本的にはこの三つを調節することで、相手のプレイスタイルにアジャストしていくんだね。
レンジはオープンレンジとかコールレンジとかだよね。でもレンジを調節するって、具体的にどうやるの?
いろんなやり方があるけど、基本はタイトorルースだね。
オープン・コール・3ベットにかかわらず、レンジをタイトにするとショーダウンで勝ちやすくなるんだ。
そうなの?どうして?
レンジをタイトにする=参加するハンドを絞るってことだから、当然勝率の低いハンドから優先的に削られていくよね。
そうすると、タイトなレンジとルースなレンジが戦ったとき、よりショーダウンの勝率が高いのはタイトなほうになるんだ。
なるほど。レンジをルースにするとどうなるの?
レンジをルースにするとショーダウンでの勝率は下がるけど、より多くのフロップでペアやドローを作ることができるよ。
タイトなレンジだとね、ショーダウンまでいけば確かに強いけど、でも参加するハンドが絞られてるから、フロップでペアや強いドローができにくいんだ。でも、ひとたびペアやドローができてしまえば、ルースなレンジよりもキッカーが強いから、より強いペアやドローを作ることができるんだね。
ふーん、ルースとかタイトって単純に広い・狭いってことかと思ってたけど、そういう違いがあるんだね。
ルースなレンジはその差を利用して、タイトなレンジに対してよりアグレッシブにフロップやターンでベットやレイズができるんだ。
「あなたはタイトだからどうせAハイでしょ。私はルースだからJと8のツーペアができてますよ」なんてね。
もちろんそのボードがどちらのレンジにとって有利かにもよるけどね。
ねえ、ルースとタイト、結局どっちがいいの?
それがまさにアジャストだよ。ルースすぎる相手にはタイトに、タイトすぎる相手にはルースにプレイするとアジャストしやすい傾向があるよ。
でも、実際にはカジノにはルースなプレイヤーがかなり多いから、タイト寄りでプレイすることになるだろうね。例えば、このグラフを見てごらん。
オレンジの線がショーダウンで勝ったときの勝ち額、緑の線がショーダウンせずにポットを取ったとき(相手をフォールドさせたとき)の勝ち額だよ。その両方を足したトータルが青い線。
オレンジは大きくプラスで、緑はマイナスになってるのがわかるでしょ?ということは、このグラフはタイトにプレイしてることが見てとれるんだ。
えっと、ショーダウンしたときはたくさん勝ってて、ショーダウンまでいかないときは自分のほうがたくさんフォールドしてるってことだから・・・確かにさっきのタイトの特徴に当てはまるね。
これはカジノによくいるルースなプレイスタイルが多いテーブルで13万ハンドをプレイした結果だよ。
もちろん中にはタイトなプレイヤーもいるから、そういうプレイヤーに対してはルースなレンジでアジャストしてるつもりだけど、全体的にはやっぱりタイト寄りにプレイしてることがわかるよね。
なーるほどね。
おっけー、じゃあアジャストのポイントの二つ目を教えてくれる?プレイラインってなんなの?
これは複数のアクションをひとまとめにした言い方なんだ。
例えば、フロップでチェックしたあとに相手のベットに対してコールする(チェック・コール)とか、フロップとターンで連続してベットを打つ(ダブルバレル)とかね。
一つのアクションだけに着目するのではなくて、複数のアクションを一連の流れとして見てみようってことなんだ。
うーん、プレイラインを調節って具体的にはどうするの?
例えば、すごく強いハンドでしかベットしないプレイヤーがいたとして、その人のベットに対してはチェック・フォールドかチェック・コールをしたほうが良さそうだよね。
でも、さっきのLAGみたいなブラフベットが異常に多いプレイヤーがベットしてきたなら、チェック・フォールドの頻度を下げてチェック・レイズをすることが多くなりそうだよ。
ふむ、確かにそれはアジャストっぽいね。
じゃあ、三つ目のポジションは?ポジションを調節って、まさかイス取りゲームをするわけにもいかないし・・・。
ポジションは主にIP(インポジション)とOOP(アウトオブポジション)についてだね。
次回また詳しく説明するけど、例えばLAGに対してはIPでプレイすることがとても大事なんだ。
なるほど、じゃあ自分がOOPのときはLAGと戦わないようにしようってことか。
うん、それもあるし、あとはさっきチンアナゴちゃんが言った「イス取りゲーム」、実は正解なんだよ。
え?そうなん?
LAGの左に座ることが大事なんだ。なぜなら、そのほうがLAGに対してIPになりやすいからね。
逆にLAGの右に座っちゃうと、OOPになることが多いよ。これはポーカーテーブルの構造上の問題だね。
ポジションって物理的なポジションのことかい!
うん。誰がどこに座っているかも大事なポイントの一つなんだね。ちょっと面白いでしょ。
さて、レンジ・プレイライン・ポジションのざっくりとした説明は以上だよ。
相手のプレイスタイルに合わせてこの三つをうまく調節することでアジャストするんだね。詳しくは次回に説明するよ。
次はポーカー友達を連れてこようかな。ジョーズくんにアジャスト方法を教えてもらうんだ。というわけで今日のまとめだよ。
今日のまとめ
- アジャストとは「相手の戦略に対してより有利な戦略(メタ戦略)を用いること」!
- アジャストには「簡易的アジャスト」と「GTO的アジャスト」の二つのやり方があるんだ
- 簡易的アジャストは精度は高くないけどゲーム全体の方針を教えてくれるよ(マクロ的)
- GTO的アジャストは精度はかなり高いけど一つ一つの状況に限定しないとわからないんだ(ミクロ的)
- 簡易的アジャストのポイントは「レンジ」「プレイライン」「ポジション」の三つ!
- プレイスタイルの分類と具体的なアジャスト方法は次回に紹介するよ
アジャストはその場のひらめきで何とかなるもんじゃないから、事前の準備がとても大事だよ。しっかり予習して実戦に臨もう!
【中級編】コンティニュエーション・ベット(CB)
CBっていつ打てばいいの?
今回は「コンティニュエーション・ベット(CB)」について話そうかな。有名なプレイだから、既に知ってる人も多いんじゃないかな。
プリフロップでオープンした人が、フロップでベットすることだよね。
うん、それが一番よくあるCBのパターンだね。実際、ポーカーではCBが打てる状況がとてもたくさんあるんだ。
そういえばポーカーの攻略本にも書いてあったなあ。
「ドライなボードならCBを打て」とか「AかKがボードにあるなら打て」とか。
それは古いCBの考え方だよ。
一昔前はそのやり方でよかったのかもしれないけど、今はドライなボードとかよりも、もっと大事な基準があるんだ。
そうなの!?っていうか、ポーカーに古いとか新しいとかあるんだ。
うん。ポーカーの技術は日進月歩だからね。
じゃあ、せっかくだし世界一有名なプレイ・CBのライフヒストリーを一緒に振り返ってみようよ。
ライフヒストリー?
CBというアイデアが生まれ、ポーカーシーンを席巻し、徐々に対策され始め、そして現在のCBの姿へ・・・という話さ。
ほほう、なんか新しいやり方だね。
うん、時系列でCBを見ていくほうが古い情報も新しい情報も理解が深まると思うんだ。ちょっとの間だけ付き合ってね。
CBの黄金時代!
さて、現在では当たり前のCBだけど、有効な戦術として初めて紹介されたのは2005年のことなんだ。
あれ、そんな最近なの?ポーカーの歴史って古そうだから、てっきり中世とかかなって。
2005年にアメリカのプロポーカープレイヤーのダン・ハリントンが『Harrington on Hold 'em Expert Strategy』という戦略本を書いてね、その中で「プリフロップ・アグレッサーはフロップでペアができてなくても、ベットしたほうがいいよ」ってことを言ったんだ。「Continuation Bet」という言葉もこのときに生まれたよ。
じゃあ、2005年以前のポーカーって、ペアがないときは必ずチェックしてたの?
はっきりしたことは言えないけど、それが一つのセオリーだったみたいだね。いやあ、今では信じられない話だよ。
マジかよ・・・。私があいのり観て、TSUTAYAでキル・ビル借りて、ガラケーの着メロをBUMP OF CHICKENにするかポルノグラフィティにするかで悩んでたときに、まさかそんなことが・・・。
僕はMDウォークマンでひたすらI WiSHと松浦亜弥を聴いてたよ。
それはそうとね、ハリントンはその本の中でCBの定義と仕組みを解説したんだ。
定義と仕組み?
さっきも言ったけど、「プリフロップ・アグレッサーがポストフロップでベットすること」、これがCBの定義なんだ。
アグレッサーってなんだっけ?
最後にレイズやベットをしたプレイヤーってことだよ。
だからプリフロップ・アグレッサーはオープン、3ベット、4ベットなんかをしたプレイヤーってことだね。
それに対してコールしたプレイヤーはノンアグレッサーっていうんだ。
そっか、ポストフロップの話でもそんなこと言ってたね。
でもさ、どうしてCBはそんなに強いプレイなの?
ハリントンはCB、特にブラフCBが有益である理由をこう説明してるよ。
相手がXY(ポケットペアでないハンド)を持ってるとき、フロップでXまたはYがペアになる確率は1/3なんだね。
だから、3回に2回は相手はフロップでハイカードしか持っていないから、ブラフCBを打てばフォールドしてくれることが多いと。
ふーむ、そりゃそうだ。ハイカードだけで戦うのはイヤだもんね。
もう一つ、プリフロップのアグレッサーとノンアグレッサーのレンジの違いがブラフCBでは大事なポイントなんだ。
レンジの違い?
つまりね、仮にQQ+やAQ+のようなプレミアハンドを持っていたら、プリフロップで3ベットや4ベットを打つことがほとんどでしょ?でも、ノンアグレッサーはプリフロップで3ベットせずにコールをしてるんだ。だから、プレミアハンドはノンアグレッサーのレンジには入りにくくて、アグレッサーのレンジには入っているんだね。
うん、強いハンドを持ってたらプリフロップでコールなんかしないもんね。
ということは、Q72のフロップでAA、KK、QQ、AQを持ってるのはアグレッサーのほうだし、A33のフロップでAA、AK、AQを持ってるのはやっぱりアグレッサーのほうなんだね。
このアグレッサーとノンアグレッサーのレンジの差を利用してブラフCBを打とう!ってのがハリントンの主張なんだ。
なるほど、やっぱCB強いんじゃん!それでそれで?2005年のCBはどうだったの?
CBは画期的なアイデアとして広く受け入れられ、一大ブームを巻き起こしたんだ。がんがんブラフCBが決まるから気持ちよかっただろうね。
ところで、冒頭でチンアナゴちゃんが言ってた「AかKがボードにあればCB」、あれは今説明したブラフCBのポイントと関係してるんだけど、わかるかな。
あ、「レンジの強さの違いを使おう」ってことか。
うん、そうなんだ。AかKがボードにあるとき、より強いAやKを持ってそうなのはアグレッサーのレンジなんだね。
あと、単純にアグレッサーのほうがAやKをたくさん持ってそうだよ。だからアグレッサーはブラフCBが打ちやすいって話なんだ。
じゃあ、「ドライなボードほどCBを打とう」ってのはどうなの?
それは相手にドローやツーペアができていない可能性が高いから、よりブラフCBにコールやレイズをされにくいってことだね。
ふむふむ。・・・なんか話を聞いてるとさ、ハリントンちゃんのCB理論、全然間違ってないと思うんだけど。
って思うでしょ?でもね、このCBの黄金時代は長くは続かないんだ。
あら、そうなの?
みんなCBを打ちまくるから、対策が考えられ始めたんだ。次の章で見ていこうか。
対策され始めたCB
さて、ハリントンが提案したCBはポーカーの画期的な技術として受け入れられたんだけど、CBが当たり前になるにつれて、うまいプレイヤーは対策を考え始めたんだね。
どんな対策なの?
レイズとフロートだよ。例えば、972みたいなボードがあったとするよね。COがCBを打ちましたと。さて、ATを持ってるBUのアクションは?
え、こんなのフォールドじゃだめなの?ペアも何もないんだし。
でも、COはドライなボードと見てQJでCBを打ってるかもしれないよ。
だからここでBUはATでレイズしたりコールすることで、ブラフCBに対抗することができるんだ。
うーん、もうちょっと詳しく教えて?
COのCB頻度が高すぎるなら、ブラフCBも多いはずだから、それに対してレイズすればその場でポット取れる可能性が高いよね。
うん、それは何となくわかるかな。でも、ただのハイカードでコールってのは一体どういうつもりなの?
これもCOのCB頻度が高いってところがポイントなんだ。COのブラフCBが多いってことは、BUのAハイはCOよりも強い可能性が高いんだ。だからAハイの勝率は悪くないと考えてコールできるんだね。
ふーむ、なるほど。
あともう一つ、CB頻度が極端に高いなら、COはマージナルなハンド(真ん中ぐらいの強さのハンド)でもCBを打ってる可能性があるよ。
972のボードだと、例えばAKとか33みたいなハンドだね。
その場合はBUのATはフロップの時点では負けてるけど、ターンでダイヤや8なんかが落ちるとフラッシュやストレートのドローになるよね。そこでCOのチェックに対してセミブラフのベットをすれば、COのAKや33はフォールドしてくれるかもしれないよ。
もちろん、ターンでAやTが落ちればバリューベットも打てるしね。
おおーなるほど。いろんなパターンを考えてるんだね。
アグレッサーのCBにハイカードでコールして、ターン以降で逆襲するプレイをフロートっていうんだ。詳しくはまた別の記事で解説するよ。
レイズとフロートねえ。CBの時代は終わっちゃったの?
完全に終わったわけじゃないけど、うまいプレイヤーに対してはCB頻度を下げなくちゃいけなくなったね。
でも、かといってブラフCBを全く打たないとなると、今度はペア以上の強いハンドだけでCBを打つことになっちゃうから、それも良くないよね。
そりゃそうだ。相手のCBが全部バリューベットなら、単純にフォールドすればいいもんね。
ということは、CBの頻度はそこそこに抑えて、バリューとブラフのバランスの取れたCBを打つことが大事になってくるんだ。そうすればレイズやフロートで簡単に対応されることはないからね。
ふむふむ。とにかく打つべし!だった時代が終わって、CBのブームも安定期に入ったんだね。
そうなんだよ。でもね、さらにこのあとで古いCB理論を完全に終わらせる出来事が起こるんだ。次の章で説明するね。
現代のCBの基準は?
さて、前章ではCBの黄金時代が終わったって話をしたんだけどね、これはあくまでも「CBへの対策とそれに対するCB側のさらなる対策」って話であって、結局いつ、どういうボードでCBを打てばいいのかについてはスッポリ抜け落ちてるよね。
あ、そういえばそうだね。
このCBの基準を決定づけるモノが2013年から15年にかけて登場したんだ。
なになに!?
ポーカーAI(人工知能)とGTO計算機だよ。中でも有名なのは2013年に登場したPokerSnowieだね。
これはディープラーニング(深層学習)を用いたポーカーAIで、AIは自分自身と何十兆ハンドも戦うことでどんなプレイをするとより利益が出るのかをどんどん学習していくんだ。
GTO計算機については・・・あ、チンアナゴちゃんはGTOって知ってる?
ポ・・・ポイズン?
残念ながらそっちじゃないんだ。ポーカーのGTOは「Game Theory Optimal」、日本語だと「ゲーム理論最適化」と言えばいいのかな。
ゲーム理論によると、ポーカーには絶対に対策されない最もバランスの取れたプレイというものがあって、それを計算してくれるのがGTO計算機だよ。有名なのは2015年に登場したPioSOLVERだね。
な、なんか一気にSFみたいになってきたね。
それで?SnowieちゃんとPioちゃんはどうしてCBと関係あるの?
AIとGTO計算機の登場によってCBの期待値が計算できるようになったんだよ。
それまではポーカーで期待値を計算するのはほとんど不可能か、あるいは簡易的な計算しかできなかったんだ。
そうなの?どうして?
ベットをするとき、それに対して相手はどんなアクションをするのか、次のストリートでどんなカードが落ちるのか、ベットサイズはいくらか、いちいち場合分けしてたらキリがないよね。ほとんど無限のパターンがあるんだ。
でも、一つ一つの状況をきちんと考慮しないと、そのベットの厳密な期待値は計算できないんだよ。
なるほど、そりゃ無理だね。でも、SnowieちゃんとPioちゃんはできるの?
うん。理論上完璧な値ではないけど、かなり正確に計算できるようになったんだ。特にSnowieは状況ごとにベット、チェック、レイズの期待値を瞬時に教えてくれるよ。
ということはだよ、昔は「ドライなボード」とか「Aが落ちてる」みたいな曖昧な基準でしかCBを語れなかったけど、今はそのCBが得かどうかを定量的に評価できるようになったんだ。
ふむ、それが今のCBの基準なんだね。
そのとおりだよ。「チェックとCBの期待値を比べたときに、より期待値が高いほうのアクションを選ぶべし」。これが絶対普遍のCBの基準なんだ。
ああ、ハリントンちゃんの時代も終わっちゃったんだねえ。
とはいえ、CBの登場がポーカーを大きく発展させたことは間違いないと思うよ。
それにアグレッサーとノンアグレッサーのレンジの違いでブラフCBを打つという考え方は間違ってなくて、現在でも十分通用するんだ。実際、Aが落ちてるボードでブラフCBを打つのはAI的にもGTO的にもよくあることだよ。
あ、そうなんだ。
ただし、状況によってはチェックのほうが期待値が高いこともあるし、CB70%・チェック30%みたいに頻度を調節することが正解のときもあるから、やっぱりAIやGTO計算機じゃないとわからないことも多いよ。
あと、最適なベットサイズの計算は昔のCB理論ではほとんど無理だね。これは今ではPioSOLVERで計算可能だよ。
ふーん。ねえ、実際にCBの期待値を計算してみてよ。
OK、じゃあ最後の章でやってみようか。
CB戦略のフロンティア
さて、じゃあ昔と今のCBの違いがわかるような例にしようかな。せっかくだしね。こんなのはどうかな。
今回はSnowieを使って説明するね。見てのとおり、BUとBBのヘッズアップだよ。BBがチェックして、アグレッサーのBUはCBを打つかチェックをするか。
Snowieの選択はチェックだよ。画像の下のほうを見てごらん。それぞれのアクションとEV(期待値)が出てるね。
チェックのEVが1.67で、ベットのEVが1.64・・・チェックのほうが期待値が高いんだね。
ボードにはAがあってしかもドライなのに、チェックのほうが良いなんて・・・。
アクションの横の「100%」っていうのが頻度だね。100%ってことは、ほかのアクションと比べてEVが高いから、常にそのアクションを選ぶのが正解ってことだよ。
もう一つ見てみようか。
今度は全く同じ状況で、ボードのAをJに変えてみたよ。
あれ!?今度はベットが100%になってる!おんなじドライなボードなのに・・。
不思議だよね。しかもベットサイズは「1Pot」、大きなCBを打つのが正解みたいだね。
どうしてこんなことになっちゃうの?なにが違うの?
それはね・・・誰にもわからない。
えっ・・・?
AIが教えてくれるのはね、何十兆ハンドもプレイして学習した結果、最初の状況ではチェック、2番目ではポットベットが最も期待値が高いという事実だけなんだ。
計算の過程は教えてくれないし、教えてくれても人間が理解できるものじゃないと思うよ。
そんな・・・。なにか、なにかヒントはないの!?
あえて言うなら、JがあることによってKQにフラッシュとストレートの可能性ができてるから、ターンでクラブやA、Tが落ちたときにダブルバレル(フロップ・ターンで連続してベット)が打てるから・・・とかかな。
でも、この話だと「じゃあターンを見てからベットしてもいいはずだ」とか、「それはそれとしてAが落ちてるボードでブラフを打ってもいいじゃん」とかに答えられないから、きっと不十分なんだ。
それじゃあ、完璧な答えはどこにあるの?
それぞれの状況ごとに個別の計算結果があるだけかもしれないし、それこそ「ダブルバレルが打てるボードならCBが正解のことが多い」みたいなざっくりとした傾向はあるのかもしれないね。本当のところはまだ誰もわかってないんだ。
ポーカーは完璧なプレイをしようとすると、簡単には理解できない闇のゲームになるのさ。
な、なんてこった・・・。じゃあ、結局どうやってCBを打てばいいのさ?
うん、じゃあその辺も含めて僕の主張をまとめるね。
まず、今日の話で一番伝えたいのは「CBとチェックを比べたときに期待値が高いほうのアクションを選ぼう!」ってことなんだ。
「ドライだから」「3回に1回しか相手はペアができてないから」、こういう判断基準はもう古くて、CBにフォールドするプレイヤーが多かった時代の話なんだ。
うんうん。
じゃあCBの期待値を測る方法はというと、AIとGTO計算機があるんだね。
これはかなり正確な計算ができるけど、一方で「なぜその期待値になるのか」がわかりにくいから、実戦でAIやGTO計算機の計算結果を再現しにくいという欠点があるんだ。
うーん。そうだよね。
そこで僕が提案する方法は次の三つだよ。
- ハンド履歴をSnowieやPioSOLVERで解析することで、実際に期待値の高いCBが打てているかを検証し、復習する
- CBの簡易的な期待値計算を行うことで、特定の状況でのCBの期待値がなぜ高い(あるいは低い)のか、検討する
- 統計的手法を用いて最適なCB戦略を体系化し、実戦に応用する
1番目はAIやGTO計算機の答えをこつこつ覚えていこうってことだよ。確実だしそれほど手間はかからないけど、効率はあまり良くないかもね。
ふーん。地道にやっていこうってことか。
2番目はこの記事でも紹介したやり方だね。実際に自分で期待値計算をやってみると、案外気づきも多いはずだよ。
ただし、これはあくまでも簡易的なやり方だから、SnowieやPioSOLVERの計算結果と誤差が出るのは注意が必要だよ。
ふむふむ。
3番目は、AIやGTOの計算結果に統計的手法を用いることで、「CBを打つ場合と打たない場合は?」「打つ場合はベットサイズはいくらが最適なのか」などの問題に答えようとする試みだよ。
つまり、個々の状況の計算過程は理解できないけど、たくさんの状況を集めてみると、一定の法則が見えてくるかもしれないんだ。もし、ざっくりとしたものでも何か法則があれば実戦に応用できるから、これが実現すれば最高だよね。
これはCB戦略のフロンティアだよ。世の中にはこういう難問に挑戦するスゴイ人たちもいるんだね。本当に尊敬するよ。僕が知ってる限りだけど、リンクを貼っておくね。
うーむ、私にはもうなにがなんだかさっぱりだよ。
チンアナゴちゃんはカジノでリベンジすることが目標だったね。それならまずはここの記事で期待値について勉強し直したり、Snowieで自分のプレイをちょこちょこ復習してみるのがいいんじゃないかな。
おっけー、大変そうだけど、まずはそうしてみようかな。
今日はここまでだよ、おつかれさま。じゃあ、今日のまとめだよ。
今日のまとめ
- CBの特徴・対策について時系列で説明したよ
- CBを打つ・打たないの基準は「CBとチェックを比べたときに期待値が高いほうを選ぶこと」!
- 期待値を計算するためにはAI(人工知能)、GTO計算機、または簡易的な計算方法を使おう!それぞれメリット・デメリットがあるんだ
SnowieとPioSOLVERの設定方法や使い方はそのうち記事にまとめようかな。
次回はチンアナゴちゃんが友達を連れてくるよ。お楽しみに!
【資料集】エクイティと期待値(EV) 実践編
前回はエクイティと期待値(EV)の定義とその違いについて説明しました。
今回はこれらのコンセプトについて、より実践的な観点から解説していきます。
フォールドエクイティの定義・計算方法
アグレッシブにベットやレイズをすることで相手プレイヤーをフォールドさせる見込みがあるとき、しばしば「フォールドエクイティがある」という言い方をします。
また、相手プレイヤーがショートスタックであったりコーリングステーションであったりする場合は、逆に「フォールドエクイティがない」という言うこともあるでしょう。
このようにフォールドエクイティは「相手をフォールドさせる見込み」といった意味で使われることがしばしばありますが、それは正確な定義ではありません。
フォールドエクイティ(FE)の定義は以下の式で表されます。
- FE=(相手プレイヤーがフォールドする確率)*(相手プレイヤーのエクイティ)
一つ具体的な状況を考えてみましょう。
BU(ボタン)はQTで3.5bbにオープン、SBはフォールドし、BBは55でコールしました。ヘッズアップです。
フロップはAK6です。BBはチェックし、BUはポットの半分のサイズのベットをしました。
この場合のBUのフォールドエクイティを考えてみます。
さて、まずはBUとBBのエクイティを見てみましょう。
フロップではワンペアの55のほうが有利ですが、QTsはガットショット・ストレートドローがあり、さらにQやTもアウツになっているため、40.5%のエクイティがあります。
次に、BBがフォールドする確率を知る必要がありますが、これはBBのプレイやスタックサイズから予想するしかありません。
とはいえ全くの勘で予想するわけではなく、いくつかの考慮すべきポイントがあります。
- SPR(Stack To Pot Ratio:スタックとポットの比)
=SPRが1に近いほど(スタックサイズがポットに比べて小さいほど)、相手がフォールドする確率は低い。 - プレイスタイル
=コーリングステーションやアグレッシブなプレイヤーほど、フォールドする確率が低い。 - レンジとボードの噛み合い
=ボードに落ちているカードと相手のレンジにあるハンドが噛み合っている(ペアやドローができやすい)ほど、相手がフォールドする確率は低い。 - 自分のプレイスタイルのイメージ
=自分がブラフベットが多いプレイスタイルだと考えられているほど、相手がフォールドする確率は低い。
これらのポイントを考慮した上で、今回はBBのフォールド確率を次のように予想しました。
BBのスタックサイズは100bbで SPRは10以上だ。
BBのプレイスタイルはタイトアグレッシブで、OOPからのフロートはまだ一度も見せていない。OOPで勝つ見込みの薄いハンドを持っているときは素直にフォールドするタイプだ。
AK6rのフロップはオープンレンジに有利なボードだ。なぜなら、BBのプレイスタイルからして、彼が AA、KK、AJo+、A5s、A4s、KQsを持っているなら、プリフロップで3ベットを打つはずだからだ。ということは、Aや Kは彼のコールレンジよりも私のオープンレンジに多く入っていることになるだろう。
私はこのセッションでまだビッグブラフを見せていないから、ブラフが少ないと思われているかもしれない。
このように考え、今回はBBのフォールド確率を70%と予想しました。
これでフォールドエクイティを計算するための材料はすべてそろいました。定義の式に必要な数字を入れると、フォールドエクイティは次のようになります。
FE=(70%)*(59.5%)=41.65%
この41.65%というフォールドエクイティは、結局何を意味しているのでしょうか。
BBはフォールドすると、彼は本来持っていた60%のエクイティをすべて失い、代わりにBUがそのエクイティを得ることになります。
ただし、BUは60%のエクイティを常に得るわけではなく、あくまでもBBがフォールドした場合にのみ得ます。
ということは、BUがベットした瞬間のエクイティは、BUが本来持っているエクイティ(40.5%)にフォールドエクイティ(41.65%)が加算され、82.15%という非常に大きな数字になるのです。
つまり、フォールドエクイティとは、「相手プレイヤーがフォールドすることによる自分のエクイティの上昇分」と言い換えることもできます。
フォールドエクイティと本来のエクイティ(ポットエクイティとも言います)を合計して考えることで、ベットした時点でのエクイティを計算することができます。
ただし、前回で説明したとおり、エクイティと期待値(EV)は別物です。
ベットした時点でのエクイティはその瞬間の勝率であって、得られる見込みのあるチップや金額を表すEVではありません。
ベットに対して相手がコールまたはレイズをした場合は、フォールドエクイティはゼロになり、さらに相手のレンジから弱いハンドがある程度消えるので、自分の本来のエクイティ(ポットエクイティ)が減少します。
そのため、ベットした時点でのエクイティが十分高い場合、ベットのEVは少なくともプラスにはなりますが、ベットにコールやレイズをされたときにエクイティが大幅に下がる場合、ベットよりもチェックのほうがEVが高くなります。
ベット周りのエクイティとEVを考える際、この点には注意が必要です。
オールインブラフのEV計算
EVを計算するためには、勝率に基づいたポットの分け前に加えて、以後のアクションがどのように利益・損失に影響を与えるかを考慮する必要があります。
しかし、オールインの場合は以後のストリートにアクションの余地が残されておらず、あくまでもオールインに対してコールするかフォールドするかだけを考えれば済むため、計算が簡単になります。
例えば、プリフロップでのブラフオールインのEVはどのように計算すればよいでしょうか。
※クリックでgifが再生・停止します
COが2.5bbにオープン、BUはA4sでブラフ3ベットを打ったところ、COから4倍のサイズの4ベットが返ってきました。
それに対してBUはブラフ5ベットオールインを選択しました。
COの4ベットに対してフォールドするとEV=0ですので、BUのブラフオールインのEVがもし少しでもプラスであれば、このオールインは正当化されます。
では、実際にこのブラフオールインのEVを計算してみましょう。
- EV(all-in)
=(COがフォールドする確率)*(BUの利益・損失)
+(COがコールする確率)*(COが勝利する確率)*(BUの利益・損失)
+(COがコールする確率)*(BUが勝利する確率)*(BUの利益・損失)
この式は前回説明したEVの計算式と同じで、まずは起こり得るすべてのシナリオを場合分けし、それぞれが起こる確率とその利益・損失を掛け算し、合計したものになっています。
まずはCOのハンドレンジを設定します。今回は{99+, AK, ATs, A3s, A2s, KQs}でCOは4ベットを打っているようです。AをBUが持っている(ブロックしている)ことを考慮して、このレンジのコンボ数は58です。
5ベットオールインに対してCOがコールするレンジは{AA, KK, QQ, AK}の27コンボとします。
フォールドするレンジは{JJ, TT, 99, ATs, A3s, A2s, KQs}、こちらは31コンボだとしましょう。
COがコールする確率は27/58*100=46.5%なので、フォールドする確率は100%−46.5%=53.5%となります。
また、COがコールした場合の勝率は、{AA, KK, QQ, AK}とA4sを比べればいいので、次のような勝率になります。
BUのA4sの勝率は約30%、COのレンジの勝率は約70%となり、大幅にCOが有利なようです。
次に、BUの利益・損失を明らかにしましょう。
COがフォールドした場合、BUはポットの131.5bbを利益として得ます。
また、オールインというアクションに必要な出費の92.5bbが損失として計上されますので、131.5bb−92.5bb=39bb、つまりオールインする前のポットサイズをBUは得ることになります。
COがコールし、なおかつCOが勝った場合、BUの利益は当然ゼロで、損失はオールインに使った92.5bbとなります。
COがコールし、なおかつBUが勝った場合、BUの利益はポットの201.5bbで、損失はオールインに使った出費の92.5bbですので、201.5bb−92.5bb=109bbを得ることになります。
これですべての数字がそろいましたので、EVの計算式に代入していきます。
- EV(all-in)
=(53.5%)*(39bb)
+(46.5%)*(70%)*(−92bb)
+(46.5%)*(30%)*(109bb)
=20.865bb−29.946bb+15.2055bb
=6.1245bb
となり、+EVであることがわかりました。
BUはフォールド(EV=0)よりもブラフオールインをしたほうが期待値が高いのです。
この結果からはいろいろなことが学べます。
まず、COはもっと広いレンジでBUのオールインにコールしなければならないかもしれませんし、あるいはブラフ4ベットを打つレンジ{99, ATs, A3s, A2s}を変えたり、4ベットのサイズを見直すべきかもしれません。
また、BUの視点から考えることもできます。
まず、この5ベットオールインのEVがここまで高いのは、A4sが相手のAをブロックしているためです。
Aが1枚既に見えているため、COがオールインにコールするAA、AKのコンボ数が7コンボも減っています。
もし、JTsや55のようなハンドで5ベットオールインをすると、COがコールするコンボ数はより多くなり、十分なフォールドエクイティが稼げない可能性が高いでしょう。
また、A4sはCOがコールするレンジのうち、AA以外のハンドに30%前後の勝率があります。この点も優秀です。
仮にCOがブラフ4ベットが少なく、{AA, KK, QQ, AKo}などの非常に狭いレンジでのみ4ベットを打っているとすると、十分なフォールドエクイティが得られないため、恐らくBUのブラフオールインは−EVになると予想できます。
そのようなnitなプレイヤーに対しては5ベットブラフは明らかにEV<0なので、COの4ベットには単にフォールドするか、あるいはそもそもA4sで3ベットを打たないのも手です。
このようにさまざまな状況を想定してオールインのEV計算をすることは、その計算結果から類推して考えたり、あるいはよりEVの高い戦略を構築するのに役立つでしょう。
コンティニュエーション・ベット(CB)の簡易的なEV計算
ポーカーではプリフロップでオールインするような状況よりも、ポストフロップで戦うことのほうが圧倒的に多いです。
ここでは特にフロップでCBのEVを簡易的に計算してみようと思います。
ここでも具体的な状況を考えてみましょう。
HJは88でオープン、BUのみがコールしてヘッズアップです。
上の画像のようなフロップが開き、HJはCBとチェックの選択ができます。
この場合のCBのEVを簡易的に計算してみたいと思います。(CBのベットサイズは3.5bbとします)
HJがCBを打った場合、以下の三つのシナリオが考えられます。
- BUはフォールドする
- BUはコールする
- BUはレイズする
ところで、2番と3番は本来さらに未来のシナリオがあるはずです。
つまり、BUがコールするとターンのカードが落ち、HJのアクションがあり、それに対するBUのアクションがあり・・・という具合です。
3番の場合も同様で、BUのレイズに対してHJのアクションがあり・・・となります。
シナリオの分岐はほとんど無限にあり、もちろんそのような複雑なEV計算は現実的ではありません。
そのため、ここでは「未来のシナリオにおいて、HJは必ずエクイティを最大限実現できるようなアクションを選ぶ」と仮定します。
未来のシナリオの中にはプレイが難しいものがあり、状況によってはどうしてもエクイティを捨てざるを得ないこともあるでしょう。
理想的にはそうした状況も含めてEV計算をしたいところですが、計算が複雑になりすぎるため、今回はそうした状況は無視し、それによってシナリオを三つのみ(BUはフォールド・コール・レイズ)に限定して簡易的なEV計算を行います。
簡易的なCBのEV計算式は以下のようになります。
- EV(CB)
=(BUがフォールドする確率)*(HJの利益・損失)
+(BUがコールする確率)*(HJの利益・損失)
+(BUがレイズする確率)*(HJの利益・損失)
まず、EVを計算するためにはHJの勝率(エクイティ)を知る必要があります。勝率はもちろんBUのレンジによって変化しますので、ここではBUのプリフロップのコールレンジを次のように設定します。
BUはAQs+や強いポケットペアを3ベットに回し、多くのスーテッドハンド、ミドル以下のポケットペア、AXでコールしています。
これは全ハンドの18.3%に相当し、かなり広いコールレンジです。
このコールレンジに対してHJの88はプロップで67%の勝率があります。非常に高い勝率です。
では次に、各シナリオを一つずつ見ていきます。
まずはHJのCBに対してBUがレイズしてきた場合を考えてみましょう。
BUは自分のレンジのうち、フラッシュドロー・5のトリップス・5のクワッズをレイズに回すと今回は考えます。
緑色はハートのスーテッド、黄色は可能なコンボ数すべてです。
コンボ数は全ハンドの3.09%ですので、BUがレイズするのは彼のレンジのうち16.8%であることがわかります。(3.09/18.3*100=約16.8%)
このようなレンジでレイズされた場合、HJはOOPであるため戦いにくく、またBUのコンボドローやオーバーカード+フラッシュドロー対してもあまりエクイティは高くなく、さらにBUが5を持っていた場合にはほとんどドローイングデッド(勝率がゼロ)です。
そのため、CBに対してBUがレイズしてきた場合には、HJは素直にフォールドすることにします。
ですので、この場合のHJの利益・損失はCBに使った出費の3.5bbとなります。
次に、CBに対してBUがコールした場合を考えてみましょう。
BUは自分のレンジのうち、9のペア、55以外のすべてのポケットペアをコールに回すと今回は考えます。
コンボ数は全ハンドの4.52%ですので、BUがコールするのは彼のレンジのうち24.7%であることがわかります。(4.52/18.3*100=約24.7%)
CBをBUにコールされた場合、BUとHJ(88)の勝率は次のようになります。
フロップが開いた時点の勝率67.3%から少し下がったとはいえ、61.5%とまだかなり高い勝率があるようです。
この場合のHJの利益・損失を計算します。
CBをコールされたことによりポットが(6.5bb+3.5bb+3.5bb)=13.5bbとなり、エクイティが61.5%ですので、13.5bb*61.5%=約8.3bb:これがHJの利益です。
そこから出費(損失)の3.5bbを引いて8.3bb−3.5bb=4.8bbとなり、これがCBにコールされたときのHJの利益・損失となります。
最後に、BUがCBに対してフォールドした場合を考えてみましょう。
先ほどのBUがレイズorコールするレンジの割合から考えて、BUがCBに対してフォールドするのは彼のレンジのうち58.5%であることがわかります。(100%−16.8%−24.7%=58.5%)
この場合のHJの利益・損失を計算します。
獲得するポットは6.5bb+3.5bb=10bb(利益)で、そこから出費の3.5bb(損失)を引くので、結局フロップが開いた時点のポットである6.5bb、これがCBに対してBUがフォールドしたときのHJの利益・損失となります。
さて、ようやく必要な数字がすべてそろいましたので、EV計算式に代入していきます。
- EV(CB)
=(58.5%)*(6.5bb)
+(24.7%)*(4.8bb)
+(16.8%)*(−3.5bb)
=4.4bb
これがHJのCBのEVです。3.5bbのCBのEVが4.4bbというのは極めて高い数字です。
EVが高くなっている理由はいくつかありますが、そもそもBUのプリフロップのコールレンジが極めて広く、そのレンジのほとんどが88に負けていることが最大の理由です。
この結果からわかるように、BUはプリフロップのコールレンジを狭くしたり、ブラフ3ベットをするレンジを作る必要があるかもしれません。
前者の場合、特にAToやJToのような投機性のないハンドや、22や33などの弱いポケットペアはプリフロップのコールレンジから消えることになるでしょう。
また、AAやKKのようなバリューの3ベットとバランスを取るかたちで、KQsやA4sなどのブラフに適しているハンドをブラフ3ベットに回すべきかもしれません。
実際、バランスの取れた以下のようなコールレンジの場合、同じフロップでもHJの88はCBを打つことができません。CBのEVが非常に低く、チェックのEVのほうが高くなるからです。
今回と同じようにEV計算をするとわかりますが、プリフロップでこのようなコールレンジでIPからコールされた場合、HJのアクションで最もEVが高いのはチェックです。
このように簡易的ではありますが、いろいろな状況のCBのEVを計算しておくことは、ポストフロップ戦略だけでなくプリフロップのコールレンジやブラフ3ベットレンジを構築する際にも役立ちます。